いまだに建築されない、建築できない建築のことをUNBUILT(アンビルト)という。最近の例では、女性建築家ザハ・ハディッドがそうだ。我が国の新国立競技場のコンペティションに入選し実現化を目指そうとしたが、予算を超える構想であり、構造的に疑問百出、巨大すぎる、景観破壊だという反対の意見が我が国のなかから噴出している渦中で、ザハ自身が心臓発作のため亡くなった。「ガタガタいわないで、あ・た・し・のデザインでつくるのよぉー!」と意気込んでいたかもしれない。実に惜しいことをした。
彼女の例を持ち出す前に、実際に建築家によって実現されなかった建築物は数多い。たが非実現であっても建築を考えることはできるし、それは結構面白いことなのだ。そうやって頭脳トレーニングを欠かさないのが建築家であろう。アンビルトの建築も、考えるだけなら実に面白い方法だと私は考えている。いまは地球上のGISやGoogleのデータを使えば、地球上のどんな場所においても、こうすればいいじゃないかという提案を、いくらでも容易につくれるようになった。
京都の街を散歩していると、空間的なヒントをくれることがある。そうしたヒントをもとにして3DCGで実証してみよう、と思って始めたのがこの蛸錦プロジェクトである。11月5日アップした画像の続きである。その後2週間の時間を費やして、ようやくこの実証が終わった。それは、ポリゴン数2億2991万1964で表示される3DCG。つまりそれだけの面の空間上のXYZの位置や角度や光の反射を計算したことになる。この程度のデザインでねぇーと思うが、確かに植栽はデータが重たいのでポリゴン数は増えるのだろう。
ここへくるまでに、一度は最初から作り直した。というのも制作中にソフトの動作が致命的に重くなり、修正できないバグらしきものが画面上に多数出現したり、よくよくみると柱の位置がずれており、オブジェクトの中に同じオブジェクトがコピーされていたりと、はちゃめちゃな3DCGだった。デザインを考えながら制作していると、余計なオブジェクトが画面上に沢山存在してしまった。試行錯誤の故だろう。
そこで再度部品から作り直し、ようやく蛸錦プロジェクトが完成した。アンビルトもいいところである。だが京都の街並みからヒントを得た空間は、結構面白いではないですか。なるほどこんな方法があったかという新しい発見だった。
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