Terrace Valley Style(TVS)は、下層階から上層階にむかって外壁面が交代して行く構造であり、各住戸の前に設けられたテラスは、日本伝統建築の現代的縁側であることは、このブログでも書いた。
現代建築のデザインが置き去りにしたものに縁側空間がある。古来からの縁側の使い方を思えば、日向で様々な家事をしたり、近所の人たちと雑談したり、囲碁をしたり、読書をしたり、時には縁側が家族の学芸会の舞台にもなるなど日常生活の中で意味のある使われ方をしてきた。現代のマンションがそうした縁側空間の意味を捨て去り、個室化しらしまったので、家族の人間関係もどこか嘘くさい。人間の生活には、アクティビティの明確なものと曖昧なものとがある。
そうした古来からの縁側空間を、専用庭というスタイルで再現できないかという試みである。空間的にはテラスの一角に見え隠れする微妙な高さの生け垣などで設えられた専用庭は、屋外の日の光を楽しむサンデッキのような場所であると同時に、近所の達とのフランクなコミュニケーションの場でもある。そして専用庭から玄関やリビングルームが連続して続けば、大きなパーティーだってできるわけだ。そんな普段の生活とは少し違う使われ方をした空間は、家族や近所のコミュニケーションをつなぐマージナルな空間である。これをマージナル・ガーデンと呼んでおこう。
すくなくともマージナル・ガーデンは、現代のマンション建築が見捨てた空間だけど、人間の生活から不必要だとされたわけではない。こうかくとマンション業者から「今のテラスを広げるだけじゃだめですかねぇー」、などといわれそうだ。実にマンション業者というのは貧困な精神の人種ばかりだ。
だから再度書いておく。アクセスは従来のマンションとは逆とし、マージナルガーデンからアクセスすること。マージナルガーデンに続く開放されたリビングルームや玄関があり、その背後にキッチンやサニタリーがあり、さらに一番奥に寝室や書斎があるというパブリックからプライベートに緩やかに空間の正確が変化してゆくゾーニングをすべきだと私は論じているのである。
次いでかいておくとテラスは、人々のコミュニケーションの場であるほかに、火災時の一時避難スペースとなり、防災上有効である。さらにかくとTVSの脇にある緑の円柱は、テラスの雨樋と植栽のプランターと擁壁をかねたデザインとしているなど、細かいアイデアは検討すればいくらでも出るだろう。
あなたは、窓から身を乗り出したときに眼のすくむような豆粒の地上の風景を見たいのか、それとも四季折々に変化すガーデンをみたいのですか、どちらですか?
ハードウェア:Mac Pro,ソフトウェアVue Infinite2016R3