グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

FIT(森林インストラクター東京会)ツアー・植物編

2010年06月17日 | 植物
一昨日の鴻池の日記でも報告したように、昨日、おとといと2日間、
森林インストラクター東京会のメンバーの方4名とスタッフ全員で島を歩きました。

普通に歩くスピードの5~6倍の時間をかけて観察しながら歩いたので、
色々なものが見つかりました。

とてもその全てをここで報告しきれないので、今日はツアー中話題になった植物を、
日曜日に虫を、報告したいと思います。

さて、FITの皆さんの感想の中で一番多かったものが、様々な樹木の葉が厚くて大きい、
というものでした。

大島の植物にはなぜ、そのような特徴があるのでしょう?
本土より多い雨、強い風、保水性の無い土壌、競争する樹種の少なさ、などなど、
きっと様々な環境の違いが重なりあい“厚くて大きな葉”を作っていったのでしょうね。

葉だけではなく大きな実も話題になりました。
ツヤツヤした緑色の、ハチジョウキブシの実です。

本土のキブシよりかなり大きいようで、皆さん「大きい~!」と驚いていらっしゃいました。

ミツバアケビの若い葉が丸いことも本土と違うそうです。

本土のものはどの時期でも葉の縁がギザギザしているとのこと。

大島のミツバアケビは、春の初めは全て葉の縁がギザギザでしたが、
5月後半頃から丸い葉が増え始めました。

本土では全ての葉がいつもギザギザなのだそうです。
なぜ大島では、春遅くに延びだす葉は縁が丸くなるのでしょう?

本土には居て大島には居ない、ミツバアケビの葉の捕食者が、関係しているのでしょうか?
そしてもしそうだとしたら、その捕食者とは一体誰??
考えると興味がつきません。

次に皆さんから歓声があがったのは、この景色。

噴火のダメージから森が再生していく過程の初期の段階を見られる、1986年の溶岩流の上です。
この日は風に運ばれる霧が、まるで生き物の様に黒い溶岩の間をすり抜けて行きました。
三原山が見えないのは少し残念だけれど、これはこれで中々の迫力です。

ハチジョウイタドリ、ススキ、オオバヤシャブシなど成長の早い、荒地でも生きられるパイオニア植物達は、
毎年ドンドン緑を増やし、風景を変えていきます。

三原山がおよそ30年に一度の大噴火を繰り返し、溶岩を噴出する活火山だからこそ、
見ることができる貴重な景色です。

ちょうどこの場所で、火口周辺に新天地を求めて進出したシュスランの話をしていた時、
スタッフの成瀬が「あった~!」と声をあげました。

成瀬の視線の先では、溶岩の隙間にシュスランが葉をひろげていました。

カルデラの中のずいぶん広範囲に、進出しているのですね。

ここなら風も避けられるし、木漏れ日の入る森の中と条件が似ているので、生きやすそうです。
良い場所見つけたね~、頑張れシュスラン!

溶岩流の下のスコリア地帯では、ウツギの純白の花と、カジイチゴの艶やかなオレンジ色の実が、
黒と緑のモザイク模様の中に、彩りを添えていました。

とても美しい、胸がキュンと来るような光景でした。

そして、あたり一面に甘い香りが…。
皆で何の香りか探したら、ハチジョウイヌツゲの小さな花が、ひっそりと咲いていました。


2日目は、切り立った崖の海岸線を歩いてみました。
ここにも春らしい景色が広がっていました。

たとえば、海を背景に咲いていたタイトゴメの可愛い花。


既にガクアジサイも花盛り。カタツムリが絵になっていますね。


ヒメユズリハの、芽生えて間もない葉も沢山見つかりました。

楕円形の丸い葉を持つヒメユズリハですが、小さなうちは縁が少しギザギザしているのですね。

イヨカズラも満開。

あちらこちらで花をつけていました。

FITの中でとりわけ植物に詳しい方も、この花は初めて見たとのことでした。
昨年一緒に歩いた、植物調査を仕事にしている方達も、イヨカズラを見たがっていました。
…ということは、もしかしたら他ではあまり見られない貴重な植物なのでしょうか?

そういえば、島の西側ではかなり数が減ってきているような気も…。
大島のイヨカズラ、大切にしなければ、ですね。

今回、知識と経験豊かなFITの方達と交流できて、とても勉強になりました。
私が殆んど手をつけていないイネ科植物も、沢山教えていただきました。

今回参加されたFITの皆さん、ありがとうございました。
また是非大島を歩きにいらしてくださいね。

(カナ)

コメント
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