グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

モウセンゴケ 噂の現場

2012年02月17日 | 植物
外輪山の都道沿いにある、希少なモウセンゴケの生育地が
危機に瀕していると噂に聞いて行ってみました。

東京都環境局自然環境部の発行した絵地図『大島・利島』には、
この付近が「コモウセンゴケ」の自生地と記されています。

同じモウセンゴケ科のモウセンゴケとコモウセンゴケは、
とてもよく似ているようです。

見分けるポイントは、葉の形。

↑左側の2本をスプーン・おたま型、
右側の2本をおしゃもじ・へら型、とします。(笑)

モウセンゴケは葉が丸く柄が長い、スプーン・おたま型。
コモウセンゴケは、おしゃもじ・へら型。

自然愛好会編集の『伊豆大島の植物』134ページ記載種は、
モウセンゴケの誤認・誤記ということになります。
2008年に改訂しましたが、
まだいくつか誤りが見つかっています。トホホ

食虫植物のモウセンゴケは、名前に「コケ」とついていますが、
種子植物の多年草です。丸い葉の表面に繊毛が密生し、
小さな昆虫を粘着させて消化してしまいます。

根から吸収した養分で花を咲かせることは出来るそうですが、
昆虫の栄養分をプラスすれば種子をより多く残せるそうです。
多年草ですが残念ながら今は冬枯れで、
葉がないので地上部はほとんど見られません。
これ↑は図鑑の転写です(汗)

『東京都の保護上重要な野生生物種(島しょ部)
~東京都レッドリスト~ 2011年版』に
載っているだろうと思いましたが、なぜかありません!
目立たない植物なので記載モレでしょうか?

国立公園の特別地域には「指定植物」が選定されていて、
採取などには環境大臣の許可が必要です。
以前、大島支庁で頂いた資料を見たら、
ありました!

モウセンゴケは当国立公園の指定植物です!

指定植物の選定理由は、
「観賞用・園芸用・薬草用などとして
採取されやすく、規制を行わなければ
絶滅する恐れのある植物であること。


[4]他の生物と共存関係にある種、
  b 、食虫植物

           」などとされています。

詳しくは、環境省のホームページで、関係法令・各種資料を開いて、
「国立・国定公園特別地域の指定植物」をご参照ください。

指定植物は、他にシマタヌキランやスカシユリなど・・・
たくさんあります。

工事がストップしているらしいと噂で聞いたので、
「指定植物」に選定されていて良かったなあ、と思ったのですが、
工事は再開され生育地は崩されていました!!!

「指定植物」制度は、抑止力にならないのですね(涙)
すぐ許可が出てしまったのでしょうか?

道路災害防除工事・・・
小さな崖ですが、道路管理者の東京都としては、
崩れる危険を防除しておかなければならない・・・
ということなのでしょう。

削られた道路の反対側には、
元町を見下ろせる見晴し台があり、
観光タクシーを止めて、お客様にこの場所も案内し、
モウセンゴケやイズノシマダイモンジソウ、
コケリンドウなどを
ご覧頂いていた運転手さんもいらしたようです。

残念ながら、
公共事業のアセスメント(影響評価)は、
一定規模以上の工事でないと行われません。

法律ではそうなっていても、国立公園の特別地域内です。
大島へ観光でいらしたお客様の多くが通る貴重な場所です。
その場所がどんな植物の自生地なのか、
他の季節の様子も確認すべきですね。

まだ削られていないところを見てみると、
トウゲシバやクラマゴケの仲間なども見られました。

工事の途中でも、「そこには貴重な植物があるよ」と指摘があったら、
遺跡が出土した場合に文化財保護法で工事をストップして
充分調べ保全するように、新たな仕組みが必要かも知れません。

モウセンゴケとダイモンジソウは移植されるそうです。
上手くいくことを見守りたいと思います。

(なるせ)
コメント
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