グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

ジオパークガイド講習「子どもたちにジオパークをどう伝えるか」

2012年02月21日 | 火山・ジオパーク
昨日の夜と今日の昼、表題のテーマのジオガイド講習が行われました。
講師は島原半島ジオパーク事務局の大野希一氏。

大野氏は地質・火山の専門家で“子どもたちに楽しく科学を伝える”活動を長く続けられています。
「ぜひそのノウハウを学びたい!」と思っていたので、今回の講習がとても楽しみでした。

そして昨日の室内講義。
実際に島原半島を歩いたと仮定してのバーチャルジオツアーを作ってきてくれました。

バーチャルツアーの一コマです。
「噴火で地面ができる時は、たった2通りの方法しかないんです。空から降ってくるか、流れてくるかです。先日も雪が降りましたけど、雪の粒を思い出してください。粒の大きさってだいたい同じですよね?大きい粒や小さい粒ってないじゃないですか?噴火も同じで空から降ってきたものは粒の大きさがそろっています。それに一か所を狙って降るわけじゃないから厚さが同じで凸凹を綺麗におおっていきます。一方、流れてくるものは色々なものを巻き込みながら、塊を崩しながら流れたりするので、粒の大きさが違うものが入っていたり、低いところほど厚くなったりするんですよ。ではこの目の前の壁は、降ってきたものが降り積もったのでしょうか?それとも流れてきたのでしょうか?」

こんなふうに、ものすごくわかりやすい説明で私達に問いかけながら、大昔に起こった大噴火の迫力や、その噴火がつくった景色の中で人の歴史が刻まれていったことなどを、次々に紹介してくれました。
 
「いや~、参りました。」って感じでした(^O^)

そして今日です。
車に乗り合わせてまずは山頂駐車場に集合。

青空の広がる爽やかな天気の中、講習が始まりました。

対岸の伊豆半島の景色を見に集まった私達に向かっての大野さんの第一声。
「伊豆半島がゆっくり動いてるの見えますか?」

予想外の第一声に一同ビックリ。
「左から右にゆっくり動いているんですよ。」

…とこうして、伊豆半島の成り立ちや、プレートの移動の話しに入っていきました。
(なんて見事な導入なんでしょう!)

パホイホイ溶岩の前では、同じ玄武岩が流れる速度によってパホイホイになったりアアになったりすることを、説明してくれました。

流れるうちに気泡が抜けると、だんだん粘りが出て速度も遅くなると…。

思わず足元の溶岩のかけらを拾って、マジマジ見ちゃいました。
溶岩流が固まった後のかけらは、気泡も引っ張られるので楕円形になっているものが多いとのこと。

なるほど~!今まで気泡の形に注目したことってありませんでしたけど、こんど裏砂漠のスコリアの気泡を観察してみなくっちゃ!(^O^)

アアとパホイホイの観察の後は、温泉ホテルの露頭へ。
ここで「降り積もったものは何層あるでしょうクイズ」をしながら、昨日の室内講義のおさらい。

地層の読み取り方と同時に、1300年ほど前は大島でも新島でも神津島でもバンバン噴火していたという光景を表現してくれました。

そして、最後に訪れたのは元町にある海岸です。

ここはしばらく噴火の影響を受けていないので、地面が波に削られて崖になっているのでそれを見に来ました。

「この壁はみんな空から降ってきたもので出来ていますが、一か所だけ流れてきたものが積っている場所があります。それはどこでしょう?」by大野さん。

「あれじゃないの?」「あそこかも!」

…と、みんなで真剣に「流れてきたもの」を探しました。
「溶岩の流れに見える密な岩があるけど、2本見えるよね~。」など様々な声が聞こえてきます。

正解は…
この写真の左半分、土石流が流れてきた時代があったようです。

黒い溶岩流に見えたのは火山灰の塊だったみたいです。
遠くから見ると見分けにくいな~(^_^;)

岩場をこえた所には、溶岩トンネルがありました。(今まで存在を知らなかった…)
結構奥があり、立派なトンネルです。

溶岩トンネルは表面が冷え、中の溶岩が流れ去るからできるもの。
私はゆっくり流れるアア溶岩はトンネルはつくらないのかと思っていたら、そんなことはないようです。

今日は「伊豆諸島を知る事典」の著者、樋口氏が参加されていて、7500年~8000年前の地層に埋もれているイノシシの骨も教えてくれました。
黄色っぽい色で教えてもらわなければ、これがイノシシの骨だとはわかりません。

イノシシを飼いながらここで暮らしていた縄文人達は、大量の火山灰で暗くなった空を見上げて何を感じていたのでしょうか?

大野氏は同じ海岸線の続きににある、少し低い壁も解説してくれました。
実は以前から黒や赤の溶岩が混ざって壁を見て「これ、どう読み取れば良いの?」って思っていたのです。

「赤い石は勢いよく飛ばなかったから十分冷やされないうちに地面に落ちたもの」
「黒い石は勢いよく飛んで空中で冷やされてから地面に落ちたもの」…なのだそうです。

ここで私の頭の中に疑問がぐるぐる…なぜなら黒い石は大きくて赤い石は小さかったからです。
「重いものの方が近くに落ちるはずなのに、空中に長く飛んでいて急冷されたってどういうことでしょう?」by私。

「あのう、基本的に、これは空を飛んできたものではないんです。」by大野氏。

…あ、なるほど…(^_^;)
そうでしたね。

空から飛んできたものは粒がそろっていて、流されてきたものは粒がバラバラって読み解くのでした(^_^;)
こんな簡単な基本をすっかり忘れている私(^_^;)(^_^;)
でも、まあ、これで心に刻まれて忘れないことでしょう(たぶん・笑)

青空の下をみんなで歩きながら、伊豆大島ジオパークの基礎になるものが確実に育っているように感じました。
本当に貴重な2日間でした。

(昨日の室内講義の参加者は51名。今日のフィールドは32名でした。)


(カナ)



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