浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】日野行介『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』(岩波新書)

2014-11-07 20:27:45 | 
 「子ども・被災者生活支援法」という法律がある。議員立法で制定されたものだ。しかし、その法は制定されただけで、最初から骨抜きにされる運命にあった。日本の政府や官僚は、もっとも困っている人々を何とかしようという意志はさらさらなく、みずから決めた政策の枠組みのなかにすべてを押し込み、それ以外のあり方は認めない。

 その政策の枠組みとは、原発事故による被害はたいしたことはなく心配するには及ばない、できるだけ早く、放射線が高くても低くても帰還すべきである、放射線については個人個人に線量計を渡すから自分で計りなさい・・・・・

 もちろん、これらは原発事故に重大な責任がある政府がとるべき政策ではない。しかし政府や官僚は、抗議や批判があろうとなかろうとひたすら無視をして粛々とすすめていく。

 「こんなことはおかしい!」、「こんなことはあってはならない!」という怒りをもって、『毎日新聞』の記者である著者が、粘り強い取材を重ねて、政府や官僚の欺瞞的な対応を明らかにしていく。

 とくに素晴らしいのは、そういう対応をする官僚の個人名をしっかりと明記して書いていることだ。血も涙もない官僚たちの本質を、個人名をきちんとしるしながら明らかにする。

 官僚たちは、「官僚」という組織のなかで一貫して無責任なことをしてきた。しかし本書は、それを許さない。官僚一人一人の名前を記しながら、彼らの言動を、いわば歴史の証言として記していく。

 ボクは昔、『マスコミ市民』に「地方記者へ」という文を書いたことがある。そこで書いたことは、記者は「歴史の記録者たれ」ということであった。

 歴史を明らかにするためには史資料が必要だ。それをもとにして歴史は叙述される。新聞記事も歴史的資料になり得る。ボクたちは、一次史料がないときなど、新聞資料をつかうことがあるからだ。

 日野氏の著書は、原発事故という重大事故にたいして政府や官僚がどう対応したのかを明らかにする歴史の記録として残されていくことだろう。被災者たちの意向を無視してどういう政策が展開されたのか、全体的な政策展開だけではなく、官僚個人の責任追及ができるように。

 官僚ひとりひとりを、官僚制の集団の中に埋没させないで、個人としてオモテに引き出そう。

 本書は、福島原発事故に対する官僚的対応を白日の下にさらすことにより、日本国家の本質を示している。

 読むべきだ。
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人権擁護は急務である

2014-11-07 09:20:29 | 政治
 下記は、『北海道新聞』記事。札幌市議会の決議は、当然のことで、こうした人権侵害の蛮行は徹底的に摘み取らなければならない。

 1930年代の再来を許してはならない。なお、この決議にただひとり反対した金子議員は、「アイヌ民族なんていまはもういない」という発言をして、ひんしゅくを買い、また抗議された人物である。

北星学園大脅迫、札幌市議会が非難決議

(11/07 07:01、11/07 08:08 更新)

 札幌市議会は6日、北星学園大(札幌市厚別区)に、従軍慰安婦問題の報道に関わった元朝日新聞記者の非常勤講師の解雇を要求する脅迫状などが届いた問題で、個人を攻撃する脅迫を非難する決議案を自民党・市民会議、民主党・市民連合などの賛成多数で可決した。

 決議は、北星大に「(講師を)すぐに辞めさせないと学生を痛めつけてやる」などとする脅迫文が送りつけられたことなどに触れ、「個人の人権を蹂躙(じゅうりん)する不当な行為は、断固として容認しない」と批判。無所属の金子快之(やすゆき)氏は「元記者は意図的に日本の名誉をけがした。大学に批判が集まるのは当然のことではないか」として、ただ一人反対した。
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