浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

歴史の没却

2017-01-04 21:02:02 | その他
 西谷修氏は、「「アメリカの世紀」の終わり」(『現代思想』1月号)で、トランプの主張には歴史が没却されていることを強調している。「歴史の没却」=「歴史を無視すること」は、日本でも普通になってしまったことだ。特に政治経済権力を掌握している集団は、特にその傾向が強い。歴史を無視しているから、過去の教訓を生かそうという発想がない。これはたいへん恐ろしいことである。

 このうえ、一般庶民が同じように「歴史を没却」してしまうなら、まさに日本は再び大きな間違った道を歩むこととなる。歴史に関わる人びとは、心しなければならない。

 西谷は、こう記している。

 歴史の没却は世界各地で深刻化しています。これは間違いなく破滅へとつながる道です。歴史を踏まえない敵対性や抗争が世界のベースになってしまえば、差別や暴力がとめどなく広まっていくでしょう。それは戦争、あるいは戦争と名付けられない集団的殺戮や虐待を、各国内部で、そして各国間で起こすことになるでしょう。
 
 そして軍学共同の動きを指摘した後、

 こうした歴史の没却に対していかに対抗していくか。これがいま学問の、というか知的活動の現場で戦われているのです。議論そのものが戦いになっています。

 多くの人びとの努力によって獲得されてきたものを護り発展させるために、あるいは歴史の中で得られた教訓を生かすために、歴史がどういう役割を果たすことができるかを考えていかなければならない。
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警戒警報・トランプ③

2017-01-04 09:29:24 | その他
 危険なトランプ。アメリカ国民は、自らにとってどうしようもないふたりの候補者から最悪の者を大統領とした。その次期大統領・トランプも、もちろん移民の子孫である。

 トランプの曾祖父ヨハネス・トゥランプはバイエルン王国にいた。祖父フリードリッヒがドイツ系移民としてアメリカで成功したということだ。しかしトランプ家は、第二次大戦中ナチスドイツとの関係から、ドイツからの移民であることを隠し、みずからをスウェーデン系移民と詐称していたという。

 さてトランプは共和党である。共和党がときにとんでもない人物を大統領候補にかつぎだしてきたことを、『現代思想』1月号で巽孝之が「パラノイアの帝国」で記している。

 共和党の前身は、ホイッグ党。19世紀半ば本来メキシコ戦争に反対であったにもかかわらず、メキシコ戦争で軍人として有名となったザカリー・テイラーを候補者としてまつりあげられた。テイラーは投票経験もなく、政治家としての経験はない根っからの軍人であった。その彼が大統領になった。アメリカ国民は、こういう人物を大統領にするという「歴史的経験」を持っている。彼は武力を使うことしか頭にない男であったが、キュウリの食べ過ぎとアイスミルクの飲み過ぎで急死したという。

 次に共和党が大統領候補としたとんでもない人物に、ゴールドウオーターがいる。ケネディの後、ジョンソンと大統領の座を争った。彼はベトナム戦争解決のために、戦術核兵器を使用すればよいと発言した、超タカ派の人物であった。あまりの過激さに、彼は大統領にはならなかった。このゴールドウォーター大統領候補のために、100万ドルを献金、応援演説をした男が、のちに大統領となるドナルド・レーガンであった。レーガンは、1980年大統領となった。彼こそアメリカの共和党保守派・富裕層の力強いバックアップを背景に、新自由主義的な政策を強烈に推進した大統領であった。現在のアメリカ国民の困難のスタートであった。

 少し戻って、ゴールドウォーターの大統領選挙で、彼を支持した人物にフレッド・トランプがいる。次期大統領の父君である。すでに大富豪であった。

 ゴールドウォーター、レーガン、トランプとつながる流れがある。その流れは、アメリカ庶民を泥沼に導くものである。
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