浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「東芝」

2017-01-20 20:55:40 | その他
 わが家にも東芝製品がある。テレビ、エアコン、炊飯器。しかしこれらのうち白物家電は中国の美的集団グループに入っている。そして医療機器関係もキャノンに売られた。

 そして現在、東芝は7000億円の損失が見込まれ、経営危機が叫ばれている。この危機は、アメリカの原発事業からもたらされたものだ。2006年、アメリカの原発企業ウェスティングハウス・エレクトリックを買収した。これが、東芝の経営を苦境に立たしている。

 東芝の、当時の経営陣は、原発産業に未来をみたのだろう。だがそれが東芝を危機に陥れている。

 原発事業から生じる損失は、これからも毎年生じることだろう。となると、東芝はみずからが行っている様々な事業を切り売りしていくしかなくなり、その末路は東芝解体ではないか。

 原発事業が割に合わないことを、この東芝の事例から学ぶことが、日立や三菱には必要だろう。



 
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【本】佐々木実『市場と権力』(講談社)

2017-01-20 11:30:20 | その他
 この本は、2013年に出版された。発売と同時に購入したのだが、ずっと机の上に積まれていた。机を片付けていたときに目につき、読もうと思って頁を繰りはじめたら、これがやめられない。ほぼ一気に読んだ。

 竹中平蔵という人物の動きを描いたものだ。竹中平蔵の動きの本質は個人的な利益の追求である。そのためには、アメリカとも連携し、またみずからの職務も効果的に利用する。その点では、すごい才能である。しかし、彼には思想も経済学的原則もない。

 ミサワホームという会社がある。今はトヨタ系列になっているようだが、そうさせたのは竹中である。竹中が金融担当大臣をしているとき、銀行に対して厳しい不良債権処理をやらせた。UFJ銀行にとっての最大の不良債権は、そのミサワホームであった。その頃トヨタはミサワホームを買収しようとしたが、創業者三澤千代治がそれを断った。すると、UFJ銀行は三澤に社長、そのあと名誉会長も退くように迫った。三澤はそれに応じたが、その後ミサワホームは産業再生機構に引き取られ、そのあとトヨタが引き取った。その時から、竹中平蔵の実兄の竹中宣雄が社長に就任し、今も社長である。

 佐々木実氏は、こう書く。

 「抵抗勢力」から奪い取った富は、「改革勢力」に与えられる。改革推進グループのなかで利益を分かちあうことが原動力となって、さらなる「改革」は推し進められていく。

 竹中平蔵が「改革」した後、木村剛や宮内義彦(オリックス)ら、竹中に協力した者たちが利益を積みあげていく。不良債権処置、郵政民営化など、すべてがみずからとそのグループの利権と化していく。

 そのプロセスが、詳細に解き明かされていく。

 しかし、それを読みながら、今更ながら「政治は利権である」ことを再認識し、同時に溜息がでた。こういう社会って、変わるのだろうか、と。

 竹中平蔵のホームページにアクセスしたら、竹中は今「海外出張」だという。その出張先はアメリカではないかと思う。アメリカの要求を実現すべく「活躍」していた彼だから、またアメリカからの「指令」を聞きにでもいったのだろう。


 本書には、大宅壮一ノンフィクション賞が与えられたそうだ。それに価する内容であると同時に、ここに記された内容を万人が知るべきである。

 
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