政治家や官僚にはモラルが皆無であることが露呈されている。こういう輩に権力が掌握されていることに唖然とする。日本は悪い国になった、と心から思うこの頃である。
さてこの本は、社会科学と言っても実験的に調査研究しながら人間社会のモラルのありかを探ろうとしたものだ。
もちろん焦点は人間の行動なのであるが、人間と同じように群れとして存在している昆虫やこうもりなどのほ乳類などとも比較しながら論じている。
順次見ていこう。
まず人間の社会行動は、「全体としての行動は「生き残りのためのシステム」として」存在している、とまず指摘する。これはすべての生命は、その種を保存できるように種全体として合理的な生き方をしているのだから、当然のことである。
人間も集団として生活しているから、「集団の中でうまくやっていくための心理・行動メカニズムを進化的に獲得しており、そのようなメカニズム」こそが「ヒトが備えている行動レパートリーの中でも中心的な位置を占める」(18)。
ではどういうことがあるのか。
「ヒトは、他者の意図を敏感に察知し、極めて戦略的に反応する「空気を読む」動物」(40)であり、「自分一人がみんなと違う考えをもっているのではないかと誰もが同時に思い込み、周囲に同調してしまう社会的現象」である「多元的無知」(41)。
「人間の社会で互恵的利他主義が普遍的に見られ、平和な暮らしを築く重要な基礎となっている」(54)。
「人は不公平な扱いをされると、強い情動反応を示す」(76)、「不正を罰することは「快」である」(77)。
その他、「共感」する能力をもつなど、実験を通して得られた結果をもとに、人間の行動のあり方を探った本である。ただ、読んでいて、緻密な説明が欠けているように思えたし、また指摘された行動については既知であることが多い。実験をするまでもなく得られる結論ではなかったかと思う。