とても良い本である。推理小説を読むような感じで読み進めた。NHKの記者として森友問題を追及する相澤記者が、どういう問題意識、手法で、取材対象に迫っていったのかがとてもよくわかる。メディア関係者は、必読だな。
話の本筋とは異なることを先ず記す。メディア関係者に対するコメントではあるが・・・
「本当の優れものは仕事を誇示しない」(246頁)
その通りである。私は歴史研究の末端にいるが、優れた学者は決して誇示しない。ということは優れていない者は、誇示する、ということである。とりわけ、今の若手の研究者には、アピールしないと就職できないという事情があるのかもしれないが、誇示する者が多い。私のように古い人間にとって、感心することではない。仕事というのは、本人が黙っていても、他者が評価してくれるものである。良いものは良いし、悪いものは悪い。それだけのことだ。仕事を誇示しない学者は、卓越した業績を保持している。
「プロの記者の記事・原稿を信じないというのは、報道への不信であり、これは民主主義の根幹を揺るがす」(301頁)
これも歴史研究のレベルでも言える。百田某が日本の歴史に関する本を出版したようだが、彼はプロの歴史研究者ではない。しかしそれが売れている。おなじ思考をもつ首相や大阪市長もそれを読むのだそうだ。私はきちんとした歴史研究者の本を読んでもらいたいのだが、ネトウヨとその周辺の人々は、いいかげんなことが記されている本を読む。これは「学問への不信」であり、「民主主義の根幹を揺るがす」ことでもある。
さて森友問題の本質は、相澤氏が指摘するように、籠池夫妻の問題ではない。
①なぜ基準を満たすのか疑問のある小学校を、なぜ大阪府は認可しようとしたのか。
②小学校予定地となっていた国有地が、何故に大幅な値引きの上で売却されたのか。
この二つである。①は大阪府知事松井一郎、②は安倍首相とその妻・昭恵に関わる。彼らは、籠池夫妻が開設しようとした小学校を支援すべく、ものすごく無理をして、さらには脱法行為までした。このことが問題なのだ。とりわけ②については、国有財産を信じられない価額で売却した、それは背任罪にあたるし、その過程で公文書の廃棄・偽造なども行った、まさに違法行為に覆われた事件なのである。
相澤さん等NHKの記者(朝日新聞記者も)が、その真実をつきとめようと取材に飛びまわった。その姿が、本書には鮮明に記されている。
しかし真実に突き当たり、それを報じようとしても、安倍政権に忖度するNHK職員がそれを妨害する。その内実が記されている。NHKのニュースは真実性から遠いという評判がすでに確定しているが、そうした内状が、ここでも暴露されている。
結局この問題を大阪特捜部が関係者をすべて不起訴とした(しかし籠池夫妻については軽微な詐欺罪で逮捕起訴した)。日本の司法当局がいかに堕落しているかを示すものとなった。
今や日本には三権分立はなく、安倍政権に権力が集中し、それに忖度しながら、みずからの利益を追求する官僚たちが蠢くという状況だ。
果たしてこうした日本がかわる可能性はあるのか?
相澤さんは、しかし、めげずに今も真実を追い求めている。その姿勢に学ぶことは多い。
多くの人に読んでもらいたい本である。
話の本筋とは異なることを先ず記す。メディア関係者に対するコメントではあるが・・・
「本当の優れものは仕事を誇示しない」(246頁)
その通りである。私は歴史研究の末端にいるが、優れた学者は決して誇示しない。ということは優れていない者は、誇示する、ということである。とりわけ、今の若手の研究者には、アピールしないと就職できないという事情があるのかもしれないが、誇示する者が多い。私のように古い人間にとって、感心することではない。仕事というのは、本人が黙っていても、他者が評価してくれるものである。良いものは良いし、悪いものは悪い。それだけのことだ。仕事を誇示しない学者は、卓越した業績を保持している。
「プロの記者の記事・原稿を信じないというのは、報道への不信であり、これは民主主義の根幹を揺るがす」(301頁)
これも歴史研究のレベルでも言える。百田某が日本の歴史に関する本を出版したようだが、彼はプロの歴史研究者ではない。しかしそれが売れている。おなじ思考をもつ首相や大阪市長もそれを読むのだそうだ。私はきちんとした歴史研究者の本を読んでもらいたいのだが、ネトウヨとその周辺の人々は、いいかげんなことが記されている本を読む。これは「学問への不信」であり、「民主主義の根幹を揺るがす」ことでもある。
さて森友問題の本質は、相澤氏が指摘するように、籠池夫妻の問題ではない。
①なぜ基準を満たすのか疑問のある小学校を、なぜ大阪府は認可しようとしたのか。
②小学校予定地となっていた国有地が、何故に大幅な値引きの上で売却されたのか。
この二つである。①は大阪府知事松井一郎、②は安倍首相とその妻・昭恵に関わる。彼らは、籠池夫妻が開設しようとした小学校を支援すべく、ものすごく無理をして、さらには脱法行為までした。このことが問題なのだ。とりわけ②については、国有財産を信じられない価額で売却した、それは背任罪にあたるし、その過程で公文書の廃棄・偽造なども行った、まさに違法行為に覆われた事件なのである。
相澤さん等NHKの記者(朝日新聞記者も)が、その真実をつきとめようと取材に飛びまわった。その姿が、本書には鮮明に記されている。
しかし真実に突き当たり、それを報じようとしても、安倍政権に忖度するNHK職員がそれを妨害する。その内実が記されている。NHKのニュースは真実性から遠いという評判がすでに確定しているが、そうした内状が、ここでも暴露されている。
結局この問題を大阪特捜部が関係者をすべて不起訴とした(しかし籠池夫妻については軽微な詐欺罪で逮捕起訴した)。日本の司法当局がいかに堕落しているかを示すものとなった。
今や日本には三権分立はなく、安倍政権に権力が集中し、それに忖度しながら、みずからの利益を追求する官僚たちが蠢くという状況だ。
果たしてこうした日本がかわる可能性はあるのか?
相澤さんは、しかし、めげずに今も真実を追い求めている。その姿勢に学ぶことは多い。
多くの人に読んでもらいたい本である。