浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

思春期の思い出

2019-01-03 15:15:09 | その他
 高校時代の一つ上の先輩のKさんから電話があった。話すのは本当にほんとうに久しぶりであった。

 私の高校時代、ベトナムでは、ベトナムの民衆が、侵略してきたアメリカ帝国主義と戦っていた。その凄まじいまでの残酷さに、当時の若者は心を痛めていた。最近は戦闘の写真、当然そこには死体が転がり、血が流れている、を見ることはなくなったが、私が高校生の頃、そういう写真は新聞でも見られた。同じ人間として、こういうことはあってはならないという正義感なり倫理感は、誰もがもっていたことだろう。

 Kさんも、私もベトナム反戦の運動に関わっていた。人間として許せない!、人間としての怒りがその原動力であった。

 Kさんは、高校からひとりひとりにあてがわれていたロッカーにベトナム反戦の本を入れていて、そうした本を読むことをすすめていた。またKさんは校内で行われた弁論大会で、しばしば弁論を行った。そのひとつに「刺青と彫師」というものがあった。その内容もベトナム戦争に係わるもので、私たちは彫師として歴史に平和という「刺青」を彫っていかなければならない、というような内容であった。今日の電話では、その内容を本人は忘れているようであった。

 人間として許せない、と考えた高校生は、その当時たくさんいた。私たちは「社会科学研究会」、通称「社研」を組織した。もちろん届け出たわけではない。

 その「社研」ではどういうことをやったのか、ほとんど記憶はないのだが、そこに集っていた人々の顔は思い出すことができる。何度も会っていたはずだ。

 高校を卒業して、私はKさんだけには会ったことがある。といってもKさんが大学を卒業するかしないかの頃で、Kさんの結婚式に出た。当時東京から静岡まで、「東海〇号」という急行があり、私はそれに乗って東京・静岡を往復した。

 Kさんは静岡大学人文学部に進学、卒論は中世史、個別荘園の研究であった。卒業後は神奈川県の中学校の教員となった。そして今も平和に関わることをしている。

 高校時代に持った思い、人間として許せない!という感性は、今もなお、Kさんにも私にも生きている。

 思春期にもったそうした思いは、捨てることができない。捨てるということは、自分自身を裏切ることになる。おそらく死ぬまで持ち続けることだろう。

 あの頃、同じような思いを持った「社研」の人々は、その後、どういった生き方をしてきたのだろうか。

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自治体のスリム化

2019-01-03 09:59:19 | 政治
 地方自治体は、スリム化に励んできた。他のことばで言えば「人減らし」である。浜松市は減らしすぎて、市役所では話し声も聞こえず、ひたすら仕事をしているようだ。窓口は非正規か派遣にやらせ、正職員は一言も発することなく忙しい業務に励んでいる。職場の雰囲気があまりにも冷たくなったので、再任用を望む人が多くはないと聞いたことがある。

 さて、政府から「地方創生計画」をつくりなさいと言われても、職員を減らしすぎてそんな計画なんかつくる暇はないよ、ということなのだろう。そうなると、つくれと命令されるからつくるけれども、東京の業者に丸投げ。

 バカみたい!!

 『中日新聞』記事。

地方創生計画、7割外注 交付金21億円、東京に還流

 政府の地方創生政策の出発点として、全国の市町村が独自で作った地域再生の基本計画「地方版総合戦略」の7割超が、外部企業などへの委託で策定されていたことが分かった。委託先は東京の企業・団体が過半数を占め、受注額は少なくとも21億円超に上ることも判明。地方自治を研究する専門機関による初の全国調査で浮き彫りになった。

 地方創生政策は、人口や雇用の減少で疲弊する地域の自立と活性化が目的で、第2次安倍政権が看板政策として打ち出した。政府は地方の主体性を促し、民間に全面依存しないよう求めたが、東京一極集中の是正に向けて地方に配られた策定段階の交付金の多くが東京に還流した形だ。

 雇用創出や移住・定住促進などを盛り込んだ戦略策定は2014年12月にスタート。法的には努力義務だったが、政府は16年3月までの策定を強く要請した。交付金申請の前提条件とされたため、事実上は策定がノルマとされ、わずか1年余りでほぼすべての自治体が作り終えた。

 調査したのは公益財団法人「地方自治総合研究所」(東京)。17年11月、全国の自治体にアンケートしたところ、白紙などを除いた有効回答1342市町村のうち、1037市町村(77・3%)が、コンサルタントやシンクタンクなど外部に委託していた。その理由として多くの自治体が「専門知識を補う」「職員の事務量軽減」を挙げた。アンケートには8割近くの自治体が回答した。

 調査で判明した受注総額は約40億円。委託先は東京の企業が上位10社のうち7社を占めた。愛知、大阪、福岡などが都道府県別の占有率で3%にも届かない中、東京の大手が1社だけで全体の12・5%となる5億円超を請け負う極端な偏りも浮かんだ。

 外部への委託費用は政府の予算枠が色濃く反映された。交付金は一市町村当たり1千万円で、全国の半数近くの市町村が700万~1千万円で委託していた。

 各地の自治体から委託された大手コンサルの責任者は本紙の取材に「瞬間風速的に大変な需要過多になった。手が足りなくなり、幾つも依頼を断った」と証言。別の責任者も「明らかな地方創生バブルだった。業界全体でも全ては受け止め切れない状態だった」と振り返った。

 ■首都大学東京の山下祐介教授(社会学)の話 地方創生で東京一極集中を止めると言っているのに、この調査結果こそまさに東京一極集中を表している。情報を一番持っている東京のコンサルに頼むという判断は自治体として当然かもしれないが、地元で考えるべき問題を投げてしまえば人口減少に向き合う機会を失う。積み上げるべき知見が積み上がらず悪循環だ。自前でやったところは問題点を自覚したはず。本来は政策形成競争だったはずが、補助金獲得競争や人口獲得競争になってしまったことをしっかり検証すべきだ。

 <地方創生政策> 地方消滅が危惧される中、自律的な地域社会を築くため、第2次安倍政権が始めた。政府は地域活性化の理念を示した「まち・ひと・しごと創生法」に基づき、全国の自治体に地元の実情に沿った5カ年計画「地方版総合戦略」の策定を要請。戦略は2019年度が最終年となる。地方創生関係の交付金のうち、国が事業費の半分を補助する「地方創生推進交付金」は、16~18年度に1347自治体が活用し、1392億円分の事業が採択されている。

(中日新聞)

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