都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「美の伝統 三井家伝世の名宝 後期展示」 三井記念美術館 12/3
三井記念美術館(中央区日本橋室町)
「美の伝統 三井家伝世の名宝 後期展示」
11/17~12/25
日本橋の新たなランドマークとなった「日本橋三井タワー」。高さ200メートル近くあるこの超高層ビルの中に、今年10月、三井グループの所有するお宝を集めた「三井記念美術館」が開館しました。そのオープニングを飾るこの展覧会、その名は「美の伝統 三井家伝世の名宝」。三井グループの強烈な自負も感じられる堂々とした企画です。
展示は前期と後期に分かれていて、作品の多くは展示替えされます。私もその両方を見るつもりでいたのですが、うっかりしている間に前期が終了。先日ようやく後期展示の方を見ることが出来ました。
会場には、国宝や重要文化財をいくつか含む貴重な品々が、約120点程度並びます。器や屏風画、碑文から刀、それに切手まで、時期も、平安時代から昭和期までと幅広くカバーします。また、前期展示では、硯箱や能面も出品されていたそうです。ジャンル別にコンパクトにまとまった展示。なかなか見応えがありました。
一番惹かれた作品は「日月松鶴図屏風」(16世紀)です。右隻と左隻に大きく広がる金屏風には、満月と三日月が重々しい質感を見せながら燦然と輝き、その下には伸びやかな松と、水辺に集う凛とした鶴が配されています。彩色は実に鮮やかです。特に、松の葉の抹茶色のようなフサフサとした表現と、深い藍をたたえた水の配色の見事さ。画面を引き立てます。そしてシャープに生き生きと描かれた鶴の味わい。特に左隻にいる、松の木に体の半分を隠しながら、しなやかな曲線を描いて、グッと回り込むかのようにこちらへ頭を向けている鶴が絶品です。もちろん、中央にて、姿勢を正すかのように、月に向かって目を向ける鶴の体のラインも素晴らしい。これには心が奪われました。
絵画ではもう一点、円山応挙の「雲龍図」(1874年)も見事です。淡い墨の濃淡にて描かれた、ダイナミックな龍と渦巻く雲。雲の渦が、右から龍に迫るかのように動き、龍もそれに向かうかのように力強く対峙する。円山応挙の作品では、前期に出品された「雪松図屏風」も拝見したかったのですが、この作品も見応え十分でした。
一番初めの、落ち着いた木目調にまとめられた「展示室1」では、名品揃いの器が出迎えてくれます。その中では、黒楽茶碗の二点、長次郎の「銘俊寛」(16世紀)と本阿弥光悦の「銘雨雲」(17世紀)に特に惹かれました。共に黒光りする重々しい質感の茶碗ですが、「銘雨雲」では、器の上部がまるで刃のような鋭さを見せていて、そのデザイン性の高さに思わず唸ってしまいます。一方の「銘俊寛」はもっと柔らかい、優しい雰囲気をたたえていて、温もりすら感じられる作品です。私としては「銘俊寛」の方が好みですが、「銘雨雲」もキレの良い造形にも惹かれます。こればかりは甲乙がつきません。
仮名や漢字の美しさを存分に味わうことの出来る碑文や、思わず恍惚としてしまう見事な日本刀も多数展示されています。日本橋にまた新たなアートの拠点が出来ました。今後の企画展にも期待したいところです。今月25日までの開催です。
「美の伝統 三井家伝世の名宝 後期展示」
11/17~12/25
日本橋の新たなランドマークとなった「日本橋三井タワー」。高さ200メートル近くあるこの超高層ビルの中に、今年10月、三井グループの所有するお宝を集めた「三井記念美術館」が開館しました。そのオープニングを飾るこの展覧会、その名は「美の伝統 三井家伝世の名宝」。三井グループの強烈な自負も感じられる堂々とした企画です。
展示は前期と後期に分かれていて、作品の多くは展示替えされます。私もその両方を見るつもりでいたのですが、うっかりしている間に前期が終了。先日ようやく後期展示の方を見ることが出来ました。
会場には、国宝や重要文化財をいくつか含む貴重な品々が、約120点程度並びます。器や屏風画、碑文から刀、それに切手まで、時期も、平安時代から昭和期までと幅広くカバーします。また、前期展示では、硯箱や能面も出品されていたそうです。ジャンル別にコンパクトにまとまった展示。なかなか見応えがありました。
一番惹かれた作品は「日月松鶴図屏風」(16世紀)です。右隻と左隻に大きく広がる金屏風には、満月と三日月が重々しい質感を見せながら燦然と輝き、その下には伸びやかな松と、水辺に集う凛とした鶴が配されています。彩色は実に鮮やかです。特に、松の葉の抹茶色のようなフサフサとした表現と、深い藍をたたえた水の配色の見事さ。画面を引き立てます。そしてシャープに生き生きと描かれた鶴の味わい。特に左隻にいる、松の木に体の半分を隠しながら、しなやかな曲線を描いて、グッと回り込むかのようにこちらへ頭を向けている鶴が絶品です。もちろん、中央にて、姿勢を正すかのように、月に向かって目を向ける鶴の体のラインも素晴らしい。これには心が奪われました。
絵画ではもう一点、円山応挙の「雲龍図」(1874年)も見事です。淡い墨の濃淡にて描かれた、ダイナミックな龍と渦巻く雲。雲の渦が、右から龍に迫るかのように動き、龍もそれに向かうかのように力強く対峙する。円山応挙の作品では、前期に出品された「雪松図屏風」も拝見したかったのですが、この作品も見応え十分でした。
一番初めの、落ち着いた木目調にまとめられた「展示室1」では、名品揃いの器が出迎えてくれます。その中では、黒楽茶碗の二点、長次郎の「銘俊寛」(16世紀)と本阿弥光悦の「銘雨雲」(17世紀)に特に惹かれました。共に黒光りする重々しい質感の茶碗ですが、「銘雨雲」では、器の上部がまるで刃のような鋭さを見せていて、そのデザイン性の高さに思わず唸ってしまいます。一方の「銘俊寛」はもっと柔らかい、優しい雰囲気をたたえていて、温もりすら感じられる作品です。私としては「銘俊寛」の方が好みですが、「銘雨雲」もキレの良い造形にも惹かれます。こればかりは甲乙がつきません。
仮名や漢字の美しさを存分に味わうことの出来る碑文や、思わず恍惚としてしまう見事な日本刀も多数展示されています。日本橋にまた新たなアートの拠点が出来ました。今後の企画展にも期待したいところです。今月25日までの開催です。
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