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「アウグスト・サンダー展」 東京国立近代美術館 12/17

東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園)
「アウグスト・サンダー展」
10/25~12/18(会期終了)

「ドイツ写真の現在」と同時に開催されていた、写真家アウグスト・サンダー(1876-1964)の展覧会です。ありとあらゆる職業や社会的地位の人間を、半ば博物学的に、そして肖像的に捉えた写真群。未完に終った「20世紀の人間」の一部として知られる写真集「時代の顔」(1929年)から、約60点ほど出品された展覧会です。

ともかくズラリと並ぶ、多種多様な人々の肖像写真。それらをぐるっと見渡すだけでも壮観でしょう。そしてこれらの写真で興味深い点は、被写体の人物を、サンダー自身が適当に選択したわけではないということです。「社会的分類をもとに7グループに分割されおよそ45のポートフォリオで構成された写真による文化作品」(解説冊子より。)という「20世紀の人間」の構想の元に、職人や女性、芸術家などが選別されていく。全ての被写体は、職業と地位というフィルターを通してのみ語られて、強い社会性によって結びつけられます。もちろん、これらの人物は、あくまでサンダーの意思によって統括されることにもなるのです。

各人物の顔だけではなく、その背景や衣服なども、全て細部まで鮮明に写し出されていました。全体を通して見ると、人がどこかミニマル的な、均質化されたものとして浮かび上がってくるのですが、各作品一つ一つの前に立つと、職業などを通り越した、その人物の人となりが強く伝わってきます。「学生」や「実業家」など、タイトルをまず認識した上で作品を見るのか、それとも作品を見てタイトルに目を移すのか。それぞれの見方によって、作品から受けるイメージがかなり異なってくるかもしれません。人から完全に社会性を剥ぎ取ることは出来るのか。サンダーの作品は、なかなかシビアな問いも投げかけているようです。

「ドイツ写真展」に負けずと劣らない、実に見応えのある企画でした。最後に登場したサンダーの「セルフポートレイト」。彼もまた、自身のフィルターによってのみ、見られ得る存在だったのでしょうか。その視線に強く惹かれました。
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