イザイ弦楽四重奏団 「バルトーク:弦楽四重奏曲第6番」他 LFJ2007

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2007
公演番号232

フォーレ 弦楽四重奏曲 作品121
バルトーク 弦楽四重奏曲第6番

演奏 イザイ弦楽四重奏団

2007/5/3 11:30 東京国際フォーラムホールB5(ガルシア・ロルカ)



フォーレとバルトークの組み合わせです。第1回「熱狂の日」より定評のあるイザイ弦楽四重奏団を聴いてきました。

フォーレは印象に薄かったので、ここではバルトークだけに触れたいと思います。息の合ったコンビというのは、まさにイザイにこそ相応しい言葉ではないでしょうか。仄かな湿り気さえ感じさせるソフトな弦楽器の調べが、かのバルトークでさえ優し気な表情をたたえた音楽へと変化していくのです。エッジは各パートの絶妙な間合いにより終始なだらかになぞられ、ピチカートや無調風のフレーズも流麗に奏でられていました。もちろんそれでいながら、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのパートはハッキリと分離して立体的に聴こえてきます。集中力は途切れません。



冒頭に登場するヴィオラのメスト(悲しみ)主題が、音楽の進む毎に物憂い気味に、また重々しく曲を支配していきます。心を掻き乱すようなチェロの慟哭の調べと、ヴィブラートに巧みなヴァイオリンの掛け合いがまた絶品でした。過度に機能的でもなく、またシャープにもなり過ぎない、ある種の古き良き香りも漂わすカルテットです。

会場のホールB5は、昨年までに比べてスペース、座席数ともにほぼ倍増しています。自由席で楽しむにはやや広過ぎるのではないでしょうか。ここも指定席制にするべきではないかと感じました。
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アラン・プラネス 「ヤナーチェク:草陰の小径を通って 第1集」他 LFJ2007

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2007
公演番号231

ヤナーチェク ピアノ・ソナタ「1905年10月1日 街頭にて」
       草陰の小径を通って 第1集

ピアノ アラン・プラネス

2007/5/3 9:45 東京国際フォーラムホールB5(ガルシア・ロルカ)



名匠プラネスによるオール・ヤナーチェク・プログラムです。目の冴えるように力強く、また明晰なピアニズムが印象に残りました。

ヤナーチェクのピアノ曲を生演奏で楽しむのは初めてでしたが、プラネスはまるでコンテンポラリーの難曲に対峙していような面持ちで一気呵成に弾き抜きます。迫力のある打鍵が音楽に大きな起伏を与え、また純度の高い和音が全体をしっかりと支えていました。その情緒性よりも、むしろ音楽の構造を丁寧に明示するかのような、半ば理路整然としたヤナーチェクです。そんな彼のアプローチは、チェコでデモ隊の労働者が射殺されたことを題材にしたという、1曲目のソナタに相応しかったと思います。

まさしく音楽の小径を彷徨うかような「草陰の小径」では、その進んでは返す音楽の流れを今ひとつ示しきれていなかったかもしれません。ここはもっと情緒に浸るような、それこそ肩の力の抜けた音楽を楽しみたいところでした。少々、力みも感じられます。



プラネスはかつてブーレーズともコンビを組み、いわゆる「前衛」を弾いていた経歴もあるのだそうです。ただ、私としてはそれよりもむしろバッハなどを聴いてみたいと思いました。そのクリアで立体的な響きが、厳格でかつ明快なバロックを生み出してくれそうです。
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