「琳派 四季のきょうえん(その2)」 畠山記念館

畠山記念館港区白金台2-20-12
「琳派 四季のきょうえん」
4/3-6/10



ほぼ一ヶ月ぶりの再訪です。抱一の「十二ヶ月花鳥図」を目当てに行ってきました。畠山記念館の琳派展です。



「十二ヶ月花鳥図」でまず目に飛び込んできたのは、水辺に映えるのびやかな燕子花の美しい、5月の「菖蒲に鷭(バン)」でした。色も深い、重みのある花に比べ、茎の部分は、かなり即興的なタッチにて消え行くように描かれています。また、花の茂みの下からひょいと顔を出したような水鳥も可愛気です。それにうっすらとした陰影を描く緑色の水辺は、その広がりや奥行を巧みに表現していました。この簡素で無駄のない空間も抱一らしい、良い意味で力の抜けた「技」の一つかと思います。



隣に並ぶ6月の「百合・葵に雀」は、朱色の大輪をつけた立葵と、肉厚の白百合の組み合わせが鮮やかな作品です。下向きの白百合には「夏秋草図屏風」のそれも連想させますが、この花びらに見る内側へ巻いた形の描写は、抱一よりもむしろ其一との関連が指摘されています。可愛らしい雀は計三羽登場していました。右上のものは、今ちょうど飛んできたばかりでしょうか。立葵の元の二羽のうち左の雀は、まるで肩を震わすかのように踏ん張って立っています。何やら一生懸命な様子です。

さて、この調子で7、8月と感想を続けていきたいところですが、残念です。今回の琳派展に出ていた「十二ヶ月花鳥図」は、この2幅だけに過ぎませんでした。時候に合わせた5、6月の部分の展示でありながらも、公式HPの展示作品紹介欄に「『十二ヶ月花鳥図』 十二幅 酒井抱一筆 (4/17~5/6)」とあれば、ついつい12幅全てが見られるものだと期待してしまいます。関係者の方によれば、スペース上の都合と他の展示の兼ね合いからして、12幅を出品するのはそもそも無理とのことでしたが、せめてそれを一言、前もって告知していただければと思いました。(2幅しかないと分かっていても行きますので…。)何はともあれ、他の部分はまたの機会におあずけです。



気を取り直して、今回の展示で一番感銘した作品を挙げたいと思います。それが、この宗達の「蓮池水禽図」です。墨の濃淡とお得意のたらし込みだけで、実に情緒豊かな光景を生み出しています。霧に包まれたかのような大振りの蓮に対するのは、頭の上のフサフサした毛まで精緻に描かれた水鳥でした。それが、水を足で気持ちよさそうにかきながら、スイスイと泳いでいるのです。ちなみに宗達の「蓮池水禽図」といえば、京博所蔵の同名の国宝も名高い作品です。余白と動物や植物が渾然一体となって、緩やかに結ばれる様子に深い趣きを感じます。見事です。

その他、琳派を王道を見るような宗達の「金銀泥四季草花下絵 古今集和歌巻」も充実していました。端正に並ぶ金地の竹と、縦横無尽に空間を跨がる銀地の梅のコントラストが絶品です。展示ではその一部が出るのみでしたが、夏以降の躑躅なども拝見出来ればとも思いました。

会期末に出品される渡辺始興の「四季花木図屏風」(5/29-6/10)や、抱一の「風神雷神図」(屏風ではありません。5/8-6/10)も気になります。出来ればもう一度行きたいです。

展覧会は6月10日まで開催されています。(5/3)

*関連エントリ
「琳派 四季のきょうえん(その1)」 畠山記念館
畠山記念館で6年ぶりの琳派展
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