「丸紅コレクション 絵画と衣装 『美の名品展』」 京都文化博物館

京都文化博物館京都市中京区三条高倉
「丸紅コレクション 絵画と衣装 『美の名品展』 - ボッティチェリ『美しきシモネッタ』・淀君の辻が花小袖 - 」
4/13-5/27



副題を含めると非常に長々しいタイトルがついていますが、ようは普段は非公開だという丸紅のコレクションを紹介する展覧会です。展示作品は主に染物などの衣装と、日本や西洋の絵画に分かれています。だから、「ボッティチェリ」と「淀君」が並列に取り上げられているわけなのです。



展覧会自体の目玉は、やはりボッティチェリの「美しきシモネッタ」(1480-85)になるのでしょう。全体的に白んだ色調のもと、朱色の衣装を身に着けた女性が一人、窓を背に横向きになって佇んでいます。金髪はまるで太い糸を束ねたように重々しく、レースの質感は透明感に溢れていました。ただしそのマチエールはやや平板です。顔こそ、強調されたあごの輪郭線によって立体感が出ていますが、首から胸元へ広がる白は不自然なほどベッタリと塗られ、明るい色遣いの割にはどこか生気に欠けた、寒々しい人物が表現されているのが気になりました。ちなみにこの「美しきシモネッタ」は、国内唯一のボッティチェリの作品だそうです。



西洋の油彩画もたくさん出ていましたが、私の好きなヴラマンクが3点も出ていたのは嬉しいところでした。いかにも彼らしい、ゆがんだ空間に木々のひしめき合う「冬景色」はもちろんのこと、パンや花瓶を力強いタッチで表現した「静物」も魅力的です。風景画以外のヴラマンクはあまり見たことがありません。とても新鮮でした。



丸紅コレクションで見るべきものは何かと問われれば、それは断然、小袖などの染物なのだと思います。コレクションにやや「軸」が見られない絵画(総花的ですらあります。)とは異なり、衣装はどれも華々しくまた凝ったものばかりで、時には驚きを与えるような奇抜なデザインを楽しむことも出来ました。中でも淀君があつらえたとされる「淀君の辻が花小袖」は見事です。近年に復元された作品ですが、流水紋様のような抽象的なパターンが空間を駆け、鮮やかな赤が力強く目に飛び込んできます。

「淀君の小袖の復元過程」(丸紅HP)

目立ってはいませんでしたが、土佐光禎による「春秋海渓流風景図 友禅染双幅」も忘れることが出来ません。一見、趣き深い掛軸画が二点並んでいるように見えますが、なんとその本画部分を含めた全てが友禅の技法によっているのです。咲き誇る桜や水の色も実に美しく染め上げられています。

「若冲群鶏図屏風」も充実していました。友禅染師の上野清江(うえのせいこう)が、かの「群鶏図」をモチーフにして作り上げたものです。若冲ブームの訪れたという大正期の作品とのことでした。

 

旧日本銀行京都支店の博物館別館(重文)の建物も見応えがありました。全200点のボリュームのある展覧会です。5月27日まで開催されています。(5/12)

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