「タイ王国・現代美術展 Show Me Thai みてみ☆タイ」 東京都現代美術館

東京都現代美術館江東区三好4-1-1
「タイ王国・現代美術展 Show Me Thai みてみ☆タイ」
4/18-5/20(会期終了)



この展覧会がどのような評判を得ていたのかは不明ですが、私としては意外なほど楽しめたので拙ブログに記録しておきます。既に一週間ほど前に会期を終えている、「タイ王国・現代美術展 Show Me Thai みてみ☆タイ」です。入場は無料でした。

いきなりポップな現代アートのオンパレードかと思いきや、導入はタイの近代美術史を軽く概観するという硬派なものでした。東京美術学校にて西洋美術を学び、タイの印象派の先駆けともなった、チト・ブアブットの「雨の新宿」(1942)などはなかなか情緒的です。また、時代は進みますが、タイ近代美術に革命をもたらした画家であるというサワット・タンティスックの「金閣寺」(1999)などにも魅力を感じました。水彩の伸びやかなタッチにて、雨中の金閣を幻想の世界へと誘っています。

展示の大部分は、70年代以降のタイ・現代美術を紹介するコーナーです。ここではタイ人アーティストに混じり、日本人の作品も展示されています。バンコク滞在中に制作した森村泰昌のポートレート、それに同じく同地にて個展開催中に街角を撮りおろした荒木経惟の「トムヤム君の冒険」は見応え十分でした。三輪車タクシーの行き交う道の向こうには、売り物(?)の金剛仏が輝いています。混沌とするアジアの街を、あえて歪んだ構図でピシャリとおさめた見事な作品です。また、奈良美智の犬小屋のオブジェなども展示されていました。

一番惹かれたのは、日本政府からの奨学金も受け、山口博一にも師事した経験のあるヤナウィツト・クンチェートーンの抽象だったかもしれません。版画でありながらメタリックな質感を見せる「豊潤な大地 豊かな水」(2006)と、銅製の黒いオブジェ「啓蒙への移行」の美しさには目を見張るものを感じました。アルプの曲線も思わせるオブジェの美感は優れています。



MOT常設でもお馴染みの「呼吸の家」が、タイ人アーティスト(モンティエン・ブンマー)の作品だったとは知りませんでした。黒い屋根のような部分に入ると、何やら香ばしいハーブの匂いが漂ってきます。おそらくまた常設でも展示されるかと思いますので、これに未体験の方は是非楽しんでみて下さい。

テント小屋に座布団を並べて何やら異常にノリの良い音楽を聞かせる、ナウィン・ラワンチャイクンの「ようこそ!ナウィン・パーティー」(2007)の『ゆるさ』は嫌いではありません。隣にはのんびりくつろげるような休憩スペースまで設けられていました。



最後はブリキやかんの可動式オブジェ、「恐竜」(ポーンタウィーサック・リムサクン)がお待ちかねです。これは2004年、今はなき国際交流基金フォーラム(赤坂)での「Have We Met?」で見て、その可愛らしさに一目惚れした作品ですが、何と12台ある恐竜くんのうち11台が壊れて動きません。ガサガサゴソゴソ、群れるやかんが足をバタバタさせながら、まさしく生き物のように動き回るのが魅力なだけに至極残念でした。

今年は「日タイ修交120周年」に当たります。この展覧会もその一環として企画されたもののようです。(5/20)

*関連リンク
展覧会公式ブログ
2007年 日タイ修好120周年(外務省)
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