酒井抱一 「四季花鳥図巻 上」(一部) 東京国立博物館

東京国立博物館
平常展示(特別2室『書画の展開』) 5/8-6/3
「酒井抱一 - 四季花鳥図巻 上 - 」(一部)

東博・平常展で公開中の酒井抱一「四季花鳥図巻」(1818)です。全長7メートルにも及ぶ上巻のうち、ちょうど今の時候に合わせた春、夏の部分、約1.5~2メートルほどが展示されています。



大名家の次男として生まれたという出自もあるのか、抱一の作品には何かと「高貴である。」とするイメージがあるようにも感じますが、もしそれが正しければ、まさにこの「四季花鳥図巻」こそが、抱一一流の優雅な趣きをたたえた会心作と言えるでしょう。抱一、58歳の頃、上質な絵具を用いて貴人の慶事のために描かれたというこの作品は、例えば葉脈における金線の一つをとってもまさしく流麗です。たらし込みによって描かれた黒い蝶の羽は透き通るように瑞々しく、控えめに照る紫陽花はガラスを敷きつめたモザイク画のような質感を見せていました。そして花や草木の全ては、あたかも水に泳ぐかのように空間をゆるやかに駆けています。窮屈でありません。

「四季花鳥図巻」には計60種もの植物や鳥が登場しますが、中でも虫が特徴的です。今回公開中の部分には、先述した蝶の他、巣にとまる蜂を見るだけにとどまりますが、抱一は光琳や宗達では描かれなかった虫たちを、四条派や清の花鳥画などより取り入れ、このような彩りのある琳派の「四季花鳥図」を作り上げました。

この作品が展示されるのは、下巻の一部が出た2005年9月以来のことです。なるべくなら通巻で見たいとも思いますが、他の部分の公開予定は今のところありません。その情報を待ちながら、また足繁く東博へ通うことになりそうです。

特集陳列の「屏風」(~6/3)と合わせて楽しまれることもおすすめします。応挙の「波涛図屏風」も見事でした。

6月3日までの公開です。

*関連リンク
東京国立博物館・名品ギャラリー・カラーフィルム検索「四季花鳥図巻」(作品の詳細な写真が掲載されています。)

*関連エントリ
来年のカレンダーはこれで決まり! 抱一の「四季花鳥図巻」
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