「子どものいる情景」 山種美術館

山種美術館千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「子どものいる情景」
7/21-9/2

「夏休み特別展」と銘打った展覧会です。と言っても、何か夏休み向けのイベントが用意されているわけでもありませんが、主に子どもたちをモチーフとする作品が展示されています。



まずはちらし表紙も飾る、伝長沢蘆雪の「唐子遊び図」(江戸後期)が印象的です。唐子遊びとは、「琴、棋(碁)、書、画」に通じてこそ博学多才であるとするという考えから、それに勤しむ子どもたちを描く漢画の主題だそうですが、この作品でも実に生き生きと様子で捉えられています。それにしても両肘をついて絵の手本に見入る子どもはまだしも、絵を傘のように頭の上で引き延ばしたり、はたまた碁石をはね除けて取っ組み合いの喧嘩をする姿は、もはや博学云々を通り越しての単なる遊びとしか言い様がありません。ちなみにこの作品は「伝蘆雪」として紹介されていますが、その理由はやや作風に真面目過ぎる嫌いがあるので本人と断定出来ないのだそうです。(ただし蘆雪であるとすると、おそらく応挙門下であった若い頃の作品と考えられます。また落款は鮮明に記されていました。)どうなのでしょうか。



松園の「折鶴」(1940年頃)も、その気品と艶やかさを感じる佳作です。おそらくは姉妹であろう二人の女性が折り紙をする様子が描かれていますが、特に惹かれるのは鶴の羽を両手で静かにのばしている女性の所作でした。松園の描く女性にはいつも凛とした、言い換えれば全く俗のない清らかさを見出しますが、この作品でもその印象は変わりません。か細く、また透き通るように白い両手と、それを嬉しそうに見やる表情についつい惚れてしまうわけです。



その他、若殿を厳しい眼差しで見やる乳母の面持ちが特徴的な清長の「大名の若殿と乳母、侍女二人」(1783年頃)や、草合わせを楽しむ子どもを端正に描いた古径の「闘草」(1907年頃)、それにたらし込みの効果的な枇杷の木の前で少女の佇む土牛の「枇杷と少女」(1930年)などが印象に残りました。特に「枇杷」では、まさに瑞々しさに溢れた枇杷の実の質感のはもちろんのこと、土牛の画ではあまり見慣れないような少女がとても新鮮にうつります。また画面端にて、やや恥ずかしそうに佇む様子も可愛らしいものです。



玉堂、清方、遊亀などの作品も展示されていますが、普段、それほど耳にしない画家たちも多く並んでいます。それもこの展覧会の見所の一つかもしれません。(出品リストはこちら。)

9月2日までの開催です。(7/28)
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