「アジアへの憧憬」 大倉集古館

大倉集古館(港区虎ノ門2-10-3 ホテルオークラ東京本館正門前)
「大倉コレクション アジアへの憧憬」
8/1-9/30



紀元前3世紀頃の中国の鏡から19世紀のタイの仏像など、中国、朝鮮、東南アジア・インドの各文物が幅広く集まった展覧会です。大倉集古館で開催中の「アジアへの憧憬」へ行ってきました。

展示の中心は中国の美術品、例えば戦国時代の銅剣や唐の「海獣葡萄鏡」、それに清の神像や明の書などですが、私が印象深かったのは最後のコーナーで紹介されていたタイとインドの仏像でした。特に時代は異なりますが、それぞれ「宝冠仏」と言われる全身に装飾のほどこされたものに見応えがあります。もしかしたら、これほどまとめてタイ・インドの仏像を見たのは初めてだったかもしれません。(両方を合わせると約15点ほどです。)



タイ・アユタヤ朝では「宝冠仏立像」(16-17世紀)がおすすめです。端正でスラッとした体つきの仏像が、実に細やかな装飾を見せる台座の上に立っています。この仏像には体の部分に装飾はなく、むしろ流麗な肉体をそのまま露にしているわけですが、それより時代の下った19世紀の同名の仏像は、全身に優れた装飾がほどこされていました。微笑しながら両手を前にする仏像が、まるで炎のような模様の衣を纏っているのです。

インドの「宝冠仏」としては、8世紀頃に確立したパーラ朝の「宝冠仏坐像」(11世紀)が見事です。また同じくパーラ朝のものでは、体をやや斜めに向け、水流のような衣に包まれた「多羅菩薩坐像」(10世紀)にも惹かれます。大岩のような立派な台座を下に、何やらくつろぐような様を見せて座っていました。

ネパールの「ヴィシュヌ神立像」(17~18世紀)も美感に秀でています。ヒンドゥーの神ヴィシュヌがその4本の腕に持つという武器を全て確認することは出来ませんでしたが、右のチャクラと左の法螺貝は手にしっかりと握られていました。



中国の美術品では、明の時代の市井の風俗絵巻とも言える「清明上河図」(15世紀)が印象的です。これは清明節と呼ばれる、陰暦の春分から15日後の節句(4月5日頃。)の蘇州の風景を表現した作品とのことですが、中に小さく描き込まれた人々が実に生き生きとした表情を見せています。店でものを売る人から酒を酌み交わす者、またはカゴに花をたくさんつめて運ぶ人から田畑を耕す者などが、臨場感に溢れた様で描かれているのです。思わず時間を忘れて、絵の中へとしばらく入り込んでしまいました。

全体としてはかなりディープな展覧会です。ただ普段、あまり見慣れないものが多かっただけに、新鮮な気持ちで楽しむことは出来ました。

9月30日までの開催です。(8/15)
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