「水と生きる」(後期展示) サントリー美術館

サントリー美術館東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン内)
「サントリー美術館 開館記念展2 『水と生きる』」
6/16~8/19



「日本美術に表現されてきた『水』の造形美」(公式HPより。)を見るという、サントリー美術館の「水と生きる」展です。実は一度、会期の早い段階にて鑑賞を済ませていたのですが、ちらし表紙を飾る応挙の「青楓瀑布図」(1787)を目当てにもう一回行ってくることにしました。



まず印象深いのは、滝壺の黒い岩を洗う力強い波と、青楓の舞う、軽やかで流麗な滝の筋の対照的な姿です。滝は白一面の、どこか抽象的な表現にて即興風に描かれ、その一方の滝壺の波は、まるで岩に襲いかかるたくさんの手のように半ば擬人化されて精緻に描かれています。それにしても滝の絵で、これほどの清涼感を思わせる作品もそうありません。透き通るような青楓はとても涼し気で、細やかな水の筋も、滝から生まれる水しぶきをこちらへ伝えるかのように表現されています。この作品は、第二章「流 水の表現」にて展示されていましたが、第三章「涼 水の感覚」で並べてもそう問題ないでしょう。良い意味で力の抜けた、応挙の軽妙洒脱な佳作です。



さて応挙以外では、鍋島の優品が多く展示されているのも見所の一つかと思います。青海波という青みがかった波模様を背景に、七つの壷が端正に並ぶ「青磁染付七壺不皿」、またはその意匠に現代的なデザインの感覚を思わせる「染付花文皿」などに惹かれました。花文皿では、その花の模様がまるで花火の開く様子にも見えます。和室ではなく、洋式のダイニングテーブルに並べても何ら違和感のない作品です。



「水」の展覧会に何故か佐竹本が出品されていました。(「佐竹本三十六歌仙絵 源順」鎌倉時代。)その謂れは、作品に墨流しの描写が見られるのと、表装にも水流を思わせる表現があるからなのだそうです。また歌自体も、「水のおもに照る月なみをかぞふれば今宵ぞ秋のもなかなりける」という、水面に輝く月を詠んだものがとられています。東博で「小町」に一目惚れして以来、佐竹本を数点見て来ましたが、まさかこの企画展で楽しめるとは思いませんでした。



美感に溢れたちろりなども多数出ています。切子のシャープな造形美と、ちろりに見る深く澄んだ青みにはまさに涼の感覚です。

全180点にも及ぶ展覧会ですが、展示替えが三度も行われています。これはサントリー美術館に限った話ではありませんが、そういった際にはせめて通し券などの配慮が欲しいところです。

ここに挙げた作品は、全て現在の会期で見ることが出来ます。次の日曜、19日までの開催です。(8/4)
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