「混沌から躍り出る星たち 2007 - 京都造形芸術大学30周年記念 - 」 スパイラルガーデン

スパイラルガーデン港区南青山5-6-23
「混沌から躍り出る星たち 2007 - 京都造形芸術大学30周年記念 - 」
7/27-8/11



イチハラヒロコ、宮永愛子、東義孝、大庭大介といったメンバーにシンパシーを感じる方にはおすすめの展覧会です。京都造形芸術大学の卒業生(招待作家)13名、及び2006年の修了制作より選抜された12名、計25名のアーティストの作品が一堂に会しています。



ちょうど受付を挟んで左手に招待作家、そして右手に卒業制作の並ぶ展示形態(一部、例外あり。)がとられていましたが、さすがに既に一線で活躍されている前者により見応えがあります。2005年、MOTでの「愛と孤独、そして笑い展」(2005年)に出品のあった『言葉の作家』イチハラヒロコ、そしてつい先日まで吾妻橋のリバーサイドホール・ギャラリーで大掛かりな個展を開催した宮永愛子(展示作品はその時と全く同じものです。)、さらには2006年の損保ジャパンの選抜奨励展でも印象深かった鉛筆画を手がける安富洋貴など、あちこちの美術館、ギャラリーでもお目にかかった馴染み深い作家が揃っていました。これだけのラインナップを無料で見られることだけでも、お得な企画であるのは間違いなさそうです。



一番印象に残ったのは、大庭大介の2点、「UROBOROS」(2007)でした。1点は60×70、もう1点は220×180センチという大作のドローイングですが、抽象パターンとも、また深い森の奥の木立を描いたとも言えるようなそのモチーフ自体が幻想的です。また、光沢感のある白系統のアクリル絵具と、それが滲み出すかように仄かに照っている綿布との組み合わせも巧みでした。その空間へと吸い込まれていくような感覚も楽しめる、インスタレーション的妙味のある絵画作品だと思います。



卒業制作では、増田有紀の「3703065」(2006)に面白さを感じます。これはバロンケント紙にシャーペンの先程度の穴を無数にあけ、何らかのモチーフを浮き上がらせているものですが、まるで粉雪の散っているようなその感触と、凹凸のある紙自体の質感がとても魅力的にうつりました。ちなみに作家によればこの穴は無心であけたもので、モチーフ自体も特に意識してつくっているわけではないそうですが、この技法を派生する形で新たな方向へ進むとさらに面白くなるのではないでしょうか。他のバリエーションも見てみたいものです。

出品作家を紹介する立派な冊子(インタビュー付き。無料。)も配布されていました。企画にも力が入っているようです。

今週の土曜日(11日)までの開催です。(8/4)
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