「都市のフランス 自然のイギリス/若冲とその時代」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-8
都市のフランス 自然のイギリス/若冲とその時代
8/7-9/17(会期終了)

 

既に会期も終えているので、二つまとめて手短か(ようは手抜きですが…。)に触れます。先日まで千葉市美術館で行われていた、「都市のフランス 自然のイギリス」と「若冲とその時代」です。メインは前者が、そして若冲の方は半ば常設展扱いとして開催されていました。

 

話題性こそ若冲に劣りますが、見応えは川越の美術館からの巡回だという「都市のフランス 自然のイギリス」の方にあったと思います。ただ、ちらしだけは、今回の展示内容を明確に指し示していなかったかもしれません。と言うのも展示の中心は、例えば表紙にもあるコンスタブルや裏面のロセッティの油彩画群ではなく、あくまでも18世紀末より19世紀にかけての英仏の挿絵や版画なのです。当時の風俗を捉えたカヴァルニやドーミエの作品から、ファンタン=ラトゥールの石版画挿絵やブレイクの黙示録的世界観に基づく版画、それにターナーのエッチングなどがズラリと揃っていました。もちろん後期展示の売り物でもあったロセッティの「レディ・リリス」(1867)の美しさは格別でしたが、(以前、府中で見たロセッティにはあまり良い印象を持ちませんでしたが、今回は素晴らしかったと思います。)見るべきはやはりこれらの小品にあったのでしょう。詳細なキャプション等、展示の理解を深めるための配慮も為されていました。英仏のロマン主義、または自然主義の流れを追うのにも最適な展示だったと感じます。



さて一方の「若冲とその時代」ですが、この展覧会では館蔵の「鸚鵡図」をはじめとする計8点の若冲より、むしろ第二章で紹介されていた南蘋派の展示を評価するべきではないでしょうか。南蘋派と言えば、先日泉屋博古館・分館で見た沈南蘋の大作を思い出しますが、今回はそれほどの名品こそなけれども、諸葛監、岡本秋暉、宋紫石らの約25点にてしっかりと楽しませてくれました。もちろん率直に申し上げると、どこかエキゾチックな印象もある南蘋派は今ひとつ好きになれませんが、当時画壇に多大な影響を与えたそれらの展示は、たんに若冲の流行にのっただけではないというこの展覧会の存在意義を示すことにも繋がっています。ちなみにその観点を抜きにして素直に惹かれたのは、長沢蘆雪、曽道怡の「花鳥蟲獣図鑑」でした。雀を描かせて蘆雪の右に出る者はいません。雀の鳴き声が今にも聞こえてきそうなほど生き生きとしています。

「若冲とその時代」では、美術館にてメールアドレスを登録すると、作品の解説がWord形式にて送られてくるというサービスが行われていました。図録がないことによる措置なのかもしれませんが、こういう企画は大歓迎です。是非、他の美術館でも取り入れて欲しいと思います。(9/9)
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