「仙がい・センガイ・SENGAI - 禅画にあそぶ - 」 出光美術館

出光美術館千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
「仙がい・センガイ・SENGAI - 禅画にあそぶ - 」
9/1-10/28

これほど肩肘張らずに楽しめる展覧会もそうないと思います。グランドオープン後では初めてとなる出光美術館の企画展です。「仙がい(*1)・センガイ・SENGAI - 禅画にあそぶ - 」へ行ってきました。



早速、まずその仙がい(1750-1837)とはなんぞやということですが、彼は江戸時代、日本最古の禅寺である博多・聖福寺の第123世住職をつとめた禅僧で、数多くの禅画を描きながら教えを説き、また民衆に愛されていた人物だそうです。そしてその禅画は「がい画無法」とも呼ばれる、全く定まった形のない自由奔放なもので、いわゆるヘタウマとも言えるような極限のデフォルメの、可愛らしくまた愉し気な世界が展開されています。もちろんそこに、仙がい一流の機知も含まれていると言うわけなのです。



ちらし表紙を飾る「指月布袋画賛」からしてぶっ飛んでいます。これは本来、布袋の示すものを見ようと指を見ても、指したものは月の彼方にあって見えない、つまりは経典(=指)にとらわれているようでは悟り(=月)を見出せないという教えを説く作品だそうですが、一見しただけでは二人の親子が打ち上げ花火でも眺めながら楽しそうにはしゃいでいるようにしか見えません。また「座禅蛙画賛」も、座禅をその形にとらわれることを戒める、ようは『座禅=悟り』ではないことを説く作品ですが、ここではある意味で蛙は常に座禅を組んでいるとして、それこそ一筆で描いたような蛙が何やらにやにやした様子で座っています。

展示の大部分を占めるのは、このような「がい画無法」の作品ですが、「仙がい展の決定版」(ちらしより。)ということで、それ以外の仙がいの画業、または生き様にも焦点が当てられていました。中でも、一般的な水墨画の技を思わせる数点の作品は、当然ながら仙がいが『無法』の絵だけしか描けなかったわけでないことを表してもいます。(仙がいは「絵の素晴らしさを賞賛されるよりも、その面白さを分かってもらえる方が良い。」とも言ったそうです。)また、彼は後半生、主に九州北部を旅し続けたという旅好きでもあったそうですが、行き先の地にて石を収集するという珍しい趣味も持っていました。それも展示の最後、「仙がいと収集熱」のセクションにて、彼の愛用の品々とともに一部紹介されています。



仙がい画の究極として挙げられるのは、円、三角、四角だけを描いた英語名「The Universe」でしょう。(ただしこの主題は禅画では珍しいものではないそうです。)万物の根源としてこの三つの形を捉え、そしてそれらが重なり合って連なる様子を見ると、この作品はやはり英訳名の通り、宇宙の全体、もしくは森羅万象を示しているものだと思います。またその上で、例えば各図形が個々の人として存在し、それぞれが手を取り合いながら一つの調和された全体を形成する、一種のユートピア的世界観も見るような気もしました。

リニューアル後も、居心地の良い出光美術館の空間は変わることがありません。お茶のセルフサービスや、ソファーの並ぶ休憩スペースも健在でした。ゆったりと腰掛けて、お城の緑や立ち並ぶビルを眺めることからして贅沢です。

10月28日まで開催されています。(9/9)

*1 涯からさんずいを取った字。機種依存文字のため全て平仮名で表記しました。
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