都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「シャガールとエコール・ド・パリコレクション」(常設展示) 青山ユニマット美術館
青山ユニマット美術館(港区南青山2-13-10)
「シャガールとエコール・ド・パリコレクション」(常設展示)
(~開催中)
噂には聞いていましたが、まさかこれほど充実したコレクションとは思いもよりません。表題の通りシャガールと、ブラック、ピカソ、藤田、ミロ、キスリング、ヴラマンク、ルオーなどの集う、青山ユニマット美術館の常設展示(全53点。)です。特に看板のシャガールに見応えがありました。
まずシャガールの画業初期の頃の作品として印象深いのは、あまり見慣れない紫色で画面をまとめあげた「窓から見たパリ」(1913)です。窓辺に佇む人物や、その頭上で浮いているかのようなカップルに彼ならではの表現を見出せますが、窓を通して広がる、光と影の分割されたような外の空間は明らかにキュビズムの影響が感じられます。作者名を言われなければ、これが彼であると分からない作品かもしれません。
一方で、チラシ表紙も飾る「ブルー・コンサート」(1945)は、まさしくシャガールならではの幻想性に強い魅力を感じる名品です。故郷ヴィテブスクや母子、そして最愛のベラのモチーフを、鮮やかなでありながらも深みと重みを感じさせる青や赤の色彩で見事に包み込みこんでいます。場所と時間を超え、まさにシャガールの記憶を全て盛り込んだ作品と言えるのではないでしょうか。そう見ると、彼の作品にはイメージの処理において、ある種のキュビズム的な部分があるのかとも思います。次元の異なる場所にいる事物を、同一の面にて張り合わせるかのように並べ、再構成してしまうわけです。
さてシャガール以外では、まず藤田の「バラ」(1922)を挙げるベきでしょう。これは藤田一流の乳白色の空間に、艶やかなバラが咲いている作品ですが、ともかくそのどこをとっても質感、または細部の描写に、藤田の繊細な感性と卓越した画力を感じることが出来ます。同じ乳白色と言えども、花瓶の磁器と背景の漆喰壁、そしてクロスの地の質感は全て異なり、また花びらの重なる様子やクロスの模様には、優れた日本画を見るような細やかな筆遣いを見ることが出来ました。これは見事です。
これまであまり意識して見たことのないマルケに、一点、優れた海景画が出ていました。それが「アルジェの港」(1940-42)です。エメラルドグリーンの海に、グレーの軍艦のような船がぽっかりと浮かんでいます。その面的な太いタッチに素朴な魅力を感じさせます。
その他では、花びらの一枚一枚が、まるで燃え盛る炎のように赤々とうごめくシャガールの「菊の花」(1926)や、白い雲の浮かぶ空に赤とピンクの鳥が舞う、おおよそブラックの画風とは思えない「空の鳥」(1960)、またはどこか愛らしいモチーフが具象と抽象の間を彷徨うミロの二点(「顔」、「鳥、虫、星座」。)などに惹かれました。
常設展なので会期はありません。また展示作品を入れ替える際には、HPで告知があるそうです。それを見計らって、再度見に行きたいと思います。(8/25)
*関連エントリ(同時開催中)
「アンドリュー・ワイエス展」 青山ユニマット美術館
「シャガールとエコール・ド・パリコレクション」(常設展示)
(~開催中)
噂には聞いていましたが、まさかこれほど充実したコレクションとは思いもよりません。表題の通りシャガールと、ブラック、ピカソ、藤田、ミロ、キスリング、ヴラマンク、ルオーなどの集う、青山ユニマット美術館の常設展示(全53点。)です。特に看板のシャガールに見応えがありました。
まずシャガールの画業初期の頃の作品として印象深いのは、あまり見慣れない紫色で画面をまとめあげた「窓から見たパリ」(1913)です。窓辺に佇む人物や、その頭上で浮いているかのようなカップルに彼ならではの表現を見出せますが、窓を通して広がる、光と影の分割されたような外の空間は明らかにキュビズムの影響が感じられます。作者名を言われなければ、これが彼であると分からない作品かもしれません。
一方で、チラシ表紙も飾る「ブルー・コンサート」(1945)は、まさしくシャガールならではの幻想性に強い魅力を感じる名品です。故郷ヴィテブスクや母子、そして最愛のベラのモチーフを、鮮やかなでありながらも深みと重みを感じさせる青や赤の色彩で見事に包み込みこんでいます。場所と時間を超え、まさにシャガールの記憶を全て盛り込んだ作品と言えるのではないでしょうか。そう見ると、彼の作品にはイメージの処理において、ある種のキュビズム的な部分があるのかとも思います。次元の異なる場所にいる事物を、同一の面にて張り合わせるかのように並べ、再構成してしまうわけです。
さてシャガール以外では、まず藤田の「バラ」(1922)を挙げるベきでしょう。これは藤田一流の乳白色の空間に、艶やかなバラが咲いている作品ですが、ともかくそのどこをとっても質感、または細部の描写に、藤田の繊細な感性と卓越した画力を感じることが出来ます。同じ乳白色と言えども、花瓶の磁器と背景の漆喰壁、そしてクロスの地の質感は全て異なり、また花びらの重なる様子やクロスの模様には、優れた日本画を見るような細やかな筆遣いを見ることが出来ました。これは見事です。
これまであまり意識して見たことのないマルケに、一点、優れた海景画が出ていました。それが「アルジェの港」(1940-42)です。エメラルドグリーンの海に、グレーの軍艦のような船がぽっかりと浮かんでいます。その面的な太いタッチに素朴な魅力を感じさせます。
その他では、花びらの一枚一枚が、まるで燃え盛る炎のように赤々とうごめくシャガールの「菊の花」(1926)や、白い雲の浮かぶ空に赤とピンクの鳥が舞う、おおよそブラックの画風とは思えない「空の鳥」(1960)、またはどこか愛らしいモチーフが具象と抽象の間を彷徨うミロの二点(「顔」、「鳥、虫、星座」。)などに惹かれました。
常設展なので会期はありません。また展示作品を入れ替える際には、HPで告知があるそうです。それを見計らって、再度見に行きたいと思います。(8/25)
*関連エントリ(同時開催中)
「アンドリュー・ワイエス展」 青山ユニマット美術館
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