「小柳裕 新作展」 ケンジタキギャラリー東京

ケンジタキギャラリー東京新宿区西新宿3-18-2-102
「小柳裕 新作展」
8/29-9/29

そのイメージは深夜2時の街角です。寝静まった都会の夜の静けさを、アクリルの質感も瑞々しいタブローに表現します。小柳裕の個展へ行ってきました。



どれも遠目では写真と見間違うほど精巧に描かれた作品です。どこでもありそうなマンションやその駐輪場、また場末の古びたアパートなどが、深い夜の闇に包まれて微睡んでいます。そしてこれらの作品に特徴的なのは、その光景を照らし出す街灯の明かりです。目もくらむほど眩しい白が、闇を突き破るかのようにして輝いています。そのコントラストは強烈です。

以下はネタバレ的な要素も含みますが、この白い明かりの表現は、元々作品を描く際にマスキングさせた部分、つまりはキャンバスの白い地そのものなのだそうです。そう言われてみると確かに光源には何も塗られておらず、他との絵具の層の段差も見て取ることができます。ちなみに作品の絵具の層は全部で6つに及ぶそうですが、白い光源はまさしく闇にぽっかり開いた穴という見立てなのかもしれません。何も塗られていない部分に強い存在感があるという、効果的なマスキングの妙の冴える作品です。

道ばたの溝に咲く花を捉えた「Geranium」(2007)にも惹かれました。誰も気に留めないような、雑草のような花にこそ愛情を注いで楽しみたいものです。

小柳裕は、2004年のVOCA奨励賞を受賞しています。他の作品も是非拝見してみたいと思います。

9月29日まで開催されています。おすすめします。(8/31)
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