「絵と俳諧に生きた風狂人」(酒井抱一@ARTISTS JAPAN第33号)

以前に拙ブログでもご紹介したことのある「ARTISTS JAPAN」の最新号に、ようやく我らの(?)酒井抱一が登場しました。琳派では第4号の光琳、そして第16号の宗達に遅れての特集です。随分と待ちました。

「ARTISTS JAPAN」(デアゴスティーニ・ジャパン)

「ARTISTS JAPAN」は92年に別出版社から刊行された冊子の再発です。よって、この抱一の特集も当時の内容をほぼ踏襲していると思われますが、特筆すべきなのは琳派研究者としても名高い仲町啓子氏のテキストが大変に充実しているということでした。おそらく現在市中に出回っている抱一、もしくは琳派関連本で、これほど彼の画業史を簡潔に、しかもそれでいて深く掘り下げた文章は他にないと思います。まさに抱一ファン必携の一冊と言えるでしょう。


表紙はやはり「夏秋草図屏風」の「夏草図」でした。ちなみに抱一はこの作品を、「夏艸雨、秋艸風」(なつくさあめ、あきくさかぜ)と呼んでいたそうです。


抱一の画業史が整理されています。また、当時の抱一を含む文人ネットワーク(サロン)に触れる記事もありました。これは、何故、抱一の芸術は江戸に生まれたのかを問う一種の文化論だと思います。


見開きのギャラリー、図版集です。率直に申し上げると発色は今ひとつですが、お馴染み「十二か月花鳥図」(尚蔵館本)や「四季花鳥図屏風」、それに「夏秋草図屏風」などが掲載されています。


背表紙は「手鑑帖」から「葛に蜥蜴図」でした。これは若冲の拓版画よりモチーフをとった作品ですが、本文中には他作品との比較も紹介されています。(抱一は若冲の拓版画より11点の図柄を借りています。)

まずは書店にてご確認下さい。ともかく抱一は書籍でも殆ど単独で取り上げられないので、次は「もっと知りたい伊藤若冲」ならぬ「もっと知りたい酒井抱一」あたりを東京美術様にお願いしたいところです。

*下二冊は、仲町氏の琳派関連本です。「すぐわかる琳派の芸術」では月に秋草鶉図屏風、夏秋草、四季花鳥図巻、桜に小禽図、手鑑帖などが、また「琳派に夢見る」ではその他に、波図屏風、八橋図屏風、十二月花鳥図(尚蔵館本)、三十六歌仙図屏風、梅模様小袖が紹介されています。もちろんともに図版入りです。

「すぐわかる琳派の美術/仲町啓子/東京美術」

「琳派に夢見る/仲町啓子/新潮社」

*抱一関連エントリ
お月見は「秋草図屏風」で。(現在、東博・平常展にて抱一の「月に秋草図屏風」が展示されています。)
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