N響定期 「モーツァルト:交響曲第36番」他 プレヴィン

NHK交響楽団第1598回定期公演 Aプログラム

オール・モーツァルト・プログラム
「フィガロの結婚」序曲 K.492
ピアノ協奏曲第24番 K.491
交響曲第36番 K.425

指揮・ピアノ アンドレ・プレヴィン
演奏 NHK交響楽団(コンサートマスター:篠崎史紀)

2007/9/8 18:00 NHKホール3階



プレヴィンを聞くのは、同じくN響でモーツァルトを指揮振りした1998年の定期以来のことです。(その際にもフィガロとK.491を演奏しています。)N響定期へ行ってきました。

10年前の公演の印象がもう殆ど残っていないので、今更ながら比較することは出来ませんが、今回、プレヴィンの聴かせてくれたモーツァルトは、まさに優美や上品という言葉のピッタリな、正攻法の、またある意味ではやや時代がかった印象も受ける音楽だったと思います。アクセントは常に控えに、またレガートの美感に秀でたその演奏は、例えばシルクの肌触りを思わせるような、滑らかでかつ柔和な音楽を作り上げていました。快活さの抑制されたフィガロ序曲、それにデモーニッシュな部分の皆無な、それこそ水墨の山水画を見るかのようなK.491などは、例えば古楽器系のアプローチなど入り込む隙もないほどに泰然としています。また、繊細な表情のヴァイオリン、小気味良く鳴る木管、そしてむしろ主張しないティンパニなど、N響もプレヴィンの指揮に柔軟に反応していました。一つのスタイルとしての完成度の高い、それこそ評論家用語を使えば「円熟味」のある演奏だったと言えそうです。

そのようなプレヴィンのアプローチが効果的だったのは、メインのラルゲット、アンダンテ楽章で聴く、奇を衒わない、足取りのゆっくりとした素朴な語り口でした。「リンツ」では中庸のテンポを基盤に、まるで各パートの音の糸を紡ぐかのようにして曲を運び、またK.491では、ピアノの技巧にこそやや冴えない部分があったものの、タッチの落ち着いた、その弱々しくもある音に透明感を見るような演奏で楽しませてくれます。この印象なら、K.595などであるとより一層、その幽玄な味わいで魅力ある演奏になっていたのではないでしょうか。その意味では、編成も大きく、また時にピアノとオーケストラが対峙するK.491では、やや力の足りない印象も否めませんでした。

この巨大な箱でも無理に響かせようとしない、まるでサロンで聴いているかのようなモーツァルトです。またこのA定期と、ラフマニノフがメインのBが逆であれば、ホールの力も借りてより効果的な演奏になっていたかもしれません。何はともあれ、NHKホールはモーツァルトには大きすぎます。



余談ですが、N響のHPがリニューアルされていました。シンプルなデザインで好感を持てますが、トップページのプレヴィンのアップが強烈です。驚かされます。
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