都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「エモーショナル・ドローイング」 東京国立近代美術館
東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園3-1)
「現代美術への視点6 エモーショナル・ドローイング」
8/26-10/13
作家の「なにかを表現しようとする欲求それ自体」(ちらしより引用)を、いわゆるドローイングから解き明かします。東京国立近代美術館で開催中の「エモーショナル・ドローイング」へ行ってきました。
出品アーティストは以下の通りです。アジア、中東の作家、計16名が紹介されていました。
イケムラレイコ(日本)、アマル・ケナウィ(エジプト)、アヴィシュ・ケブレザデ(イラン/アメリカ)、キム・ジュンウク(韓国)、ホセ・レガスピ(フィリピン)、ナリニ・マラニ(インド)、奈良美智(日本)、ジュリアオ&マニュエル・オカンポ(アメリカ/フィリピン)、S. テディ D.(インドネシア)、坂上チユキ(日本)、ピナリー・サンピタック(タイ)、ミツ・セン(インド)、アディティ・シン、シュシ・スライマン(マレーシア)、辻直之(日本)、ウゴ・ウントロ(インドネシア)
一般的にドローイングと言えば、小さな紙片にでも描かれたペンによるスケッチ風の作品を想像してしまいますが、この展覧会ではもっと広義の、言い換えれば線描から派生するアニメーションやインスタレーション表現までに範囲が広がっています。よって、展示されている作品はいわゆるドローイングだけではありません。実際、映像もかなり多く、また奈良美智の小屋を用いた大掛かりなインスタレーションなど、おおよそドローイングと銘打たれた展示のイメージからはほど遠いものもいくつか紹介されていました。そして今回の主役は、間違いなくそれらの広義のドローイングにあります。率直なところ、思っていた以上に楽しむことが出来ました。
時にデュマス風の激しい感情の発露が見られるようなイケムラレイコ、または性のモチーフも氾濫する、近代美術館としてはなかなか刺激的なミトゥ・センの紙を用いたインスタレーションなども印象的でしたが、まずおすすめしたいのが二点の映像作品、辻直之の「影の子供」と「エンゼル」です。ともに温かみを感じる手書きの線描が、その線の軌跡を残しながらモノクロの画面にて物語を練り上げていくという作品ですが、後者では男女の出生の話が、どこかシュールながらもほのぼのとした味わいにて表現されています。ラストシーンに登場する大きな木は、やはり二人をアダムとイブに位置づけるためのものなのでしょうか。のしかかるように二人を覆っていました。
奈良美智のインスタレーションが他を圧倒しています。展示室中央には、原美術館でも有名な一室を連想させる小屋が構え、その周囲には初期より近作まで、ゆうに100点を超えるドローイングがずらりと掲示されていました。少なくともここ最近、都内近辺にてこれほど多くの奈良のドローイングを見る機会などそうなかったでしょう。また今までとは大きく変化した、最新作の少女のモチーフが何とも刺激的です。まるでこれまでのピュアな瞳の中に秘めてきた、まさにエモーショナル的なものが爆発したかのようにはじけています。かの少女は、ひょっとするとここに来て反抗期を迎えているのかもしれません。
近美の現代美術展というと、どこかいつも難解な印象がありますが、今回はドローイングという間口の広い取っ付き易さと、その反面での多様性を提示した好企画に仕上がっていました。
今月13日までの開催です。
「現代美術への視点6 エモーショナル・ドローイング」
8/26-10/13
作家の「なにかを表現しようとする欲求それ自体」(ちらしより引用)を、いわゆるドローイングから解き明かします。東京国立近代美術館で開催中の「エモーショナル・ドローイング」へ行ってきました。
出品アーティストは以下の通りです。アジア、中東の作家、計16名が紹介されていました。
イケムラレイコ(日本)、アマル・ケナウィ(エジプト)、アヴィシュ・ケブレザデ(イラン/アメリカ)、キム・ジュンウク(韓国)、ホセ・レガスピ(フィリピン)、ナリニ・マラニ(インド)、奈良美智(日本)、ジュリアオ&マニュエル・オカンポ(アメリカ/フィリピン)、S. テディ D.(インドネシア)、坂上チユキ(日本)、ピナリー・サンピタック(タイ)、ミツ・セン(インド)、アディティ・シン、シュシ・スライマン(マレーシア)、辻直之(日本)、ウゴ・ウントロ(インドネシア)
一般的にドローイングと言えば、小さな紙片にでも描かれたペンによるスケッチ風の作品を想像してしまいますが、この展覧会ではもっと広義の、言い換えれば線描から派生するアニメーションやインスタレーション表現までに範囲が広がっています。よって、展示されている作品はいわゆるドローイングだけではありません。実際、映像もかなり多く、また奈良美智の小屋を用いた大掛かりなインスタレーションなど、おおよそドローイングと銘打たれた展示のイメージからはほど遠いものもいくつか紹介されていました。そして今回の主役は、間違いなくそれらの広義のドローイングにあります。率直なところ、思っていた以上に楽しむことが出来ました。
時にデュマス風の激しい感情の発露が見られるようなイケムラレイコ、または性のモチーフも氾濫する、近代美術館としてはなかなか刺激的なミトゥ・センの紙を用いたインスタレーションなども印象的でしたが、まずおすすめしたいのが二点の映像作品、辻直之の「影の子供」と「エンゼル」です。ともに温かみを感じる手書きの線描が、その線の軌跡を残しながらモノクロの画面にて物語を練り上げていくという作品ですが、後者では男女の出生の話が、どこかシュールながらもほのぼのとした味わいにて表現されています。ラストシーンに登場する大きな木は、やはり二人をアダムとイブに位置づけるためのものなのでしょうか。のしかかるように二人を覆っていました。
奈良美智のインスタレーションが他を圧倒しています。展示室中央には、原美術館でも有名な一室を連想させる小屋が構え、その周囲には初期より近作まで、ゆうに100点を超えるドローイングがずらりと掲示されていました。少なくともここ最近、都内近辺にてこれほど多くの奈良のドローイングを見る機会などそうなかったでしょう。また今までとは大きく変化した、最新作の少女のモチーフが何とも刺激的です。まるでこれまでのピュアな瞳の中に秘めてきた、まさにエモーショナル的なものが爆発したかのようにはじけています。かの少女は、ひょっとするとここに来て反抗期を迎えているのかもしれません。
近美の現代美術展というと、どこかいつも難解な印象がありますが、今回はドローイングという間口の広い取っ付き易さと、その反面での多様性を提示した好企画に仕上がっていました。
今月13日までの開催です。
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