「トレース・エレメンツ」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「トレース・エレメンツ - 日豪写真メディアにおける精神と記憶 - 」
7/19-10/13(会期終了)



これほどロングランに関わらず、何故か見るのはどうも会期末になってしまいます。先日までオペラシティで開催されていた「トレース・エレメンツ」へ行ってきました。

10名の日豪アーティストによる、写真から映像メディアまでを横断する展覧会です。主力は『映像』、また括りは『日本とオーストラリア』ということで、見る前は失礼ながらも散漫ではないかと危惧していましたが、実際には期待以上の内容で楽しむことが出来ました。一見、バラバラに映るメディアアートを器用にまとめてしまうのも、日頃手堅い企画で魅せるオペラシティならではのことかもしれません。



一番の目当てはもちろん田口和奈です。彼女の独特なモンタージュ絵画はこれまでにもタロウナスの個展、または佐倉市美の「カオスモス」などで追ってきましたが、今回紹介されてい新作群(2008年)には、従来にはない新たな要素が加わっているようにも感じられました。つまりかつては、例えば真直ぐ前を見据える女性ポートレートのように静的で、あまりモデルの人となりを感じさせない、まさにモンタージュそのものだったのが、新作では動的な、ようは髪を振り乱す女性のような激しい情念が発露されたものに変化していたわけです。これは意外な展開でした。



さて田口以外でこの展覧会が比較的良かったのは、通常なら『忍耐』の要求される映像系の作品に、双方向の要素が加わっていたからかもしれません。秀逸なのは、アレックス・デイヴィスの「ディスロケーション」です。長方形の展示室の正面に小型のモニターを4台埋め込み、作家によるパフォーマンスと、それを覗き込む観客自身との姿を奇妙な形で融合させています。作品の中へ入り込むのはやはり照れくさいのでしょうか。観客の大方は自身の写り込まない、一番左のモニターの前に立っていました。ここは大手を振ってパフォーマンスと絡み、犬に吠え立てられたいところです。

双方向メディアと言えば同じオペラシティ内にあるICCも有名ですが、そちらと連携する企画があればなお良かったような気がしました。

展覧会は既に終了しています。
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