「ピサロ展」 大丸ミュージアム・東京

大丸ミュージアム・東京千代田区丸の内1-9-1 大丸東京店10階)
「印象派の巨匠 ピサロ展 - 家族と仲間たち - 」
10/9-27



イギリス最古の美術館、オックスフォード大学・アシュモリアン美術館所蔵のピサロ、及びその周辺画家の絵画を展観します。東京大丸で開催中の「ピサロ展」へ行ってきました。

単刀直入に「ピサロ展」と聞けば、それこそピサロの作品がずらりと並ぶ姿をイメージしてしまいますが、サブタイトルの「家族と仲間たち」に要注目です。つまりは高名なカミーユ・ピサロをメインに、その子で画家のリュシアン、フェリックス、オロヴィダらの作品といった、『ピサロファミリー』全体を探る展覧会になっています。よって約90点の出品作のうち、カミーユは40点強と、約半数にとどまっていました。カミーユだけを浴びるように見たいと願われる方にとっては、やや物足りなさが残るかもしれません。



とはいえ、普段目にしないピサロファミリーに接するのは相当に新鮮味があります。ピサロの5人の子供のうち、画家として最も成功したのは長男のリュシアンでした。柔らかな光が斜めに差し込み、長閑な田園風景を淡いタッチの点描で示す「エラニー教会」(1886)はなかなかの佳作です。前景に広がる野原と、覆いかぶさる木立、そして画面全体を支えるかのようにそびえ立つ尖塔とが、無駄のない構成で組み合わされていました。もちろんカミーユにも、例えば「窓からの眺め」(1888)のような点描作品がありますが、父より多大なる影響を受けているとはいえ、後に「新印象派の発展に貢献」(チラシより引用。)したというリュシアンの独自性を探してみるのも悪くないのではないでしょうか。またフェリックスでは「ねずみ」(1892-97)が特異です。何やら劇画風にアレンジされたねずみが、浮世絵を思わせるような大胆なトリミングの中で不気味に駆けています。カミーユの画風とはおおよそ離れた場所にある作品と言えそうです。



「家族」の他に「仲間たち」とあるのは、ピサロに影響を与えたバルビゾン派の作品や、親交のあったコロー、ミレー、ドービニーのことを指しています。率直なところ、ここまで範囲を広げると展示の焦点がぼやけてしまいますが、回顧展の印象も残るコローの「森の小川」(1867)など、魅力あるものもいくつか展示されていました。また作業する少年を背中から見て描いた、クールベの「石割りの少年」(1865)も興味深い一枚です。美しい田園風景の描かれたバルビゾン派と並べて展示されると、改めてクールベの異質性が際立ってくるような気もします。



カミーユの作品を挙げるのを忘れていました。今回のマイベストは彼らしからぬ作風も感じさせる、「淡紅色のしゃくやく」(1873)です。花瓶から溢れんばかりに咲き誇る薄紅色のしゃくやくが、大胆なタッチにてふくよかに表されています。花の瑞々しい生気を良く伝える作品です。

出来れば単独の回顧展を期待したいものです。今月27日まで開催されています。
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