「小村雪岱とその時代」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館さいたま市浦和区常盤9-30-1
「小村雪岱とその時代 - 粋でモダンで繊細で - 」
2009/12/15-2010/2/14



埼玉県立近代美術館で開催中の「小村雪岱とその時代 - 粋でモダンで繊細で - 」へ行ってきました。

なお同美術館で行われた山下裕二氏の講演会、「昭和の春信・小村雪岱を応援する」の内容については、以下の記事にまとめてあります。

「昭和の春信・小村雪岱を応援する(山下裕二)」 埼玉県立近代美術館

既に会期末を迎えた展覧会です。細かい点は講演会の記事を参照いただくとして、ここでは私が思う雪岱の魅力を至ってシンプルに三つほど挙げてみました。

1.デザイナーとしての魅力



東京美術学校卒業後、資生堂に入社し、数々のデザインを手がけた雪岱のセンスは、その絵画作品にも間違いなく受け継がれています。展示では冒頭に資生堂時代の作品もいくつか紹介されていましたが、鏡花本の装丁をはじめ、例えば「河庄」における後の洒脱な画風は全く古さを感じませんでした。

2.艶やかな線



挿絵画家としても活躍した雪岱は、その澱みない『線』にこそ魂を込めて描いたに違いありません。「おせん」シリーズの他、墨一色で描かれた挿絵の原画の線には、どこかなまめかしい魅力に満ちあふれていました。全くジャンルこそ異なりますが、雪岱から町田久美の線を連想してしまいました。

3.描きすぎないこと-舞台としての絵画-



展覧会の最後でも紹介されている通り、雪岱は歌舞伎の舞台装置を多数手がけています。時にミニチュアを覗いているような印象さえ与える雪岱画は、まさに書き割りそのものであるのかもしれません。建具や家具の他、そこに植物などの最低限の事物だけを組み合わせて、それを絵画上の一つの『背景』に仕立て上げました。「青柳」を舞台に、今から始まるであろうドラマを連想したのは私だけではなかったのではないでしょうか。

奇遇にも元々、同美術館に備え付けられていた格子窓が雪岱作品とうまくマッチしていました。またこの展示のために作られたという雪岱デザインの雪兎行灯も会場の雰囲気を盛り上げています。

「芸術新潮2010年2月号/小村雪岱を知っていますか」

混雑しているというほどではありませんが、思いの外に館内は賑わっていました。表紙デザインも光る、芸術新潮の小村雪岱特集の効果もあるかもしれません。なお図録は先週末、一時品切れとなりましたが、以降増刷で対応されるとのことでした。

2月14日までの開催です。お見逃しなきようご注意下さい。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )