都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「音が描く風景/風景が描く音 - 鈴木昭男・八木良太 - 」 横浜市民ギャラリーあざみ野
横浜市民ギャラリーあざみ野(横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内)
「音が描く風景/風景が描く音 - 鈴木昭男・八木良太 - 」
1/28-2/13
「音を独自の視点でとらえ表現する」(ギャラリーHPより引用)二名のアーティストが、それぞれ個展形式にて新作を発表します。横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「音が描く風景/風景が描く音 - 鈴木昭男・八木良太 - 」へ行ってきました。
鈴木昭男(1941~)、八木良太(1980~)のプロフィールについては本展のHPをご参照下さい。なお会場の2つのフロアのうち、一階が鈴木、また二階が八木のスペースとなっていました。
出品作家@音が描く風景/風景が描く音 鈴木昭男・八木良太
あざみ野地域全体の「音」をフィールドワークとして収集する鈴木の制作を追うまでには至りませんでしたが、今回は近作で構成された八木の展示により強い魅力を感じました。ちなみに八木と聞けば、2009年に原美術館で開催された「ウィンター・ガーデン」での『凍れるレコード』を思い出す方も多いのではないでしょうか。また無人島プロダクションでの「回路」展のレコードの上を走る汽車も印象深いものがありました。
単に音を用いたとしても、八木の一種の作品の『見立て』は鑑賞者の想像力を著しく解放させることは言うまでもありません。冒頭、中央に置かれた一つのテーブルと椅子、「机の下の海」(2010)のヘッドホンをつけ、水の音を聞きながら周囲を見やると、正面の鳴門の渦を捉えた写真「Wave Form」(2010)の景色の力も借りてか、あたかも自分が海の中にいるかのような感覚を与えられはしないでしょうか。
またその周囲の作品、つまりは傘に雨水の音を流し込んだ「Rainy Day Music」(2010)、そして水槽に浮かぶレコードに空と海の境界を記録した「Sky/Sea」(2010)、さらにはシルクスクリーンに刻まれた文字の色を虹のようなグラデーションで描いたその名も「虹」(2006)を順に追うと、ここに海を感じつつ、水の生々流転、大気の循環にまで広がる壮大なスケールの世界がイメージとしてわき上がってきます。
表現は適切ではないかもしれませんが、簡素な仕掛けから、知覚を揺さぶり、そこに詩的な要素を組み込ませる様子は、内藤礼の世界にも通じる要素がありました。
海と空より一転、音のパルスの洗礼を受けた後に登場するのが、「Warp」(2009)と呼ばれる円形のスクリーンを用いた映像の作品です。中に入り、回転するプロジェクターの川縁の風景を追うと、単にその映像がループしているように見えますが、実はここにはある秘密が隠されています。
また同じ部屋にある「時間を止める方法」(2008)と題された壁掛け時計にも注目です。ここも一見、時計の針が逆回転しているだけのようにも思えますが、良く目をこらすとそこにあるトリックが加えられていることが分かります。
三つの鏡を組み合わせてエンデのテキストを実際にはない鏡面で浮かび上がらせる「鏡の中の鏡」(2009)同様、いわゆる錯視的行為から、空間、そして時間の認識までを操る八木の魅力ここにありと言えるような構成でした。
本展の出品数は20点弱と決して多くありませんが、これまではどちらかと言えば断片的にしか紹介されなかった八木の『全体』と『今』を知るには、この上ない機会ではないでしょうか。
会期末の紹介になってしまったのが残念ですが、是非ともおすすめしたいと思います。
明日、13日まで開催です。なお入場は無料でした。
「音が描く風景/風景が描く音 - 鈴木昭男・八木良太 - 」
1/28-2/13
「音を独自の視点でとらえ表現する」(ギャラリーHPより引用)二名のアーティストが、それぞれ個展形式にて新作を発表します。横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「音が描く風景/風景が描く音 - 鈴木昭男・八木良太 - 」へ行ってきました。
鈴木昭男(1941~)、八木良太(1980~)のプロフィールについては本展のHPをご参照下さい。なお会場の2つのフロアのうち、一階が鈴木、また二階が八木のスペースとなっていました。
出品作家@音が描く風景/風景が描く音 鈴木昭男・八木良太
あざみ野地域全体の「音」をフィールドワークとして収集する鈴木の制作を追うまでには至りませんでしたが、今回は近作で構成された八木の展示により強い魅力を感じました。ちなみに八木と聞けば、2009年に原美術館で開催された「ウィンター・ガーデン」での『凍れるレコード』を思い出す方も多いのではないでしょうか。また無人島プロダクションでの「回路」展のレコードの上を走る汽車も印象深いものがありました。
単に音を用いたとしても、八木の一種の作品の『見立て』は鑑賞者の想像力を著しく解放させることは言うまでもありません。冒頭、中央に置かれた一つのテーブルと椅子、「机の下の海」(2010)のヘッドホンをつけ、水の音を聞きながら周囲を見やると、正面の鳴門の渦を捉えた写真「Wave Form」(2010)の景色の力も借りてか、あたかも自分が海の中にいるかのような感覚を与えられはしないでしょうか。
またその周囲の作品、つまりは傘に雨水の音を流し込んだ「Rainy Day Music」(2010)、そして水槽に浮かぶレコードに空と海の境界を記録した「Sky/Sea」(2010)、さらにはシルクスクリーンに刻まれた文字の色を虹のようなグラデーションで描いたその名も「虹」(2006)を順に追うと、ここに海を感じつつ、水の生々流転、大気の循環にまで広がる壮大なスケールの世界がイメージとしてわき上がってきます。
表現は適切ではないかもしれませんが、簡素な仕掛けから、知覚を揺さぶり、そこに詩的な要素を組み込ませる様子は、内藤礼の世界にも通じる要素がありました。
海と空より一転、音のパルスの洗礼を受けた後に登場するのが、「Warp」(2009)と呼ばれる円形のスクリーンを用いた映像の作品です。中に入り、回転するプロジェクターの川縁の風景を追うと、単にその映像がループしているように見えますが、実はここにはある秘密が隠されています。
また同じ部屋にある「時間を止める方法」(2008)と題された壁掛け時計にも注目です。ここも一見、時計の針が逆回転しているだけのようにも思えますが、良く目をこらすとそこにあるトリックが加えられていることが分かります。
三つの鏡を組み合わせてエンデのテキストを実際にはない鏡面で浮かび上がらせる「鏡の中の鏡」(2009)同様、いわゆる錯視的行為から、空間、そして時間の認識までを操る八木の魅力ここにありと言えるような構成でした。
本展の出品数は20点弱と決して多くありませんが、これまではどちらかと言えば断片的にしか紹介されなかった八木の『全体』と『今』を知るには、この上ない機会ではないでしょうか。
会期末の紹介になってしまったのが残念ですが、是非ともおすすめしたいと思います。
明日、13日まで開催です。なお入場は無料でした。
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