「相笠昌義展 日常生活」 損保ジャパン東郷青児美術館

損保ジャパン東郷青児美術館新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階)
「相笠昌義展 日常生活」
1/9-2/21



損保ジャパン東郷青児美術館大賞の受賞(2007年)を記念し、旧作から近作までの約70点にてその画業を振り返ります。同美術館で開催中の「相笠昌義展 日常生活」へ行ってきました。



私が相笠昌義(1939年~)を初めて知ったのは、オペラシティの収蔵品展を見たことが切っ掛けですが、何かと最上段のチラシのような作品のイメージが強い中で、この個展はそうした彼への半ば先入観を覆すことに成功していたかもしれません。ずばり相笠のコラージュをご覧になったことがあるでしょうか。彼は1962年に芸大を卒業後、油画を制作しながら、そうした版画作品なども数多く手がけました。比較的若い頃の「古典主義による顔連作、憂鬱」(1963年)もまた、意外な一面を覗かせる一枚です。まるで青の時代のピカソのようなポートレートでした。



大都会の賑やかな景色を捉えながらも、そこに生きる人間たちの孤独感を伝える面にこそ強い個性があるのは言うまでもありませんが、一転してモデルに愛情の注がれた、例えば家族を微笑ましい様子で描いた作品にも魅力が感じられます。赤いドレス姿の妻が椅子に腰掛ける「民族衣装の由美子」(1986年)や、裸の子どもたちがポーズを構える「子供時代」(2004年)には、都会の殺伐とした群衆とは異なった、幸せで満ち足りた気配があふれていました。また特に子どものややデフォルメされた描写には、岸田劉生を連想させるものがあります。思わぬ接点でした。



チラシ表紙の大賞受賞作、「交差点にて、あるく人」(2007年)は、ほぼ同じ構図の二枚の作品と並んで展示されていました。得意とする正面からの視点にて、老若男女、まさに多様な人間たちが横断歩道を渡る様子を切り取ったこの一連のシリーズの中に、おそらく作者自身の姿も描き込まれています。会場の入口で紹介されている相笠本人の写真をヒントに探してみて下さい。

ところでその写真を見ても相笠のイメージが大きく変わりました。イタリアの山中でポーズを構えるその姿はまさに力強く、画中のメランコリックは雰囲気は皆無と言って良いほどありません。失礼な言い方かもしれませんが、実にカッコいい老人でした。



元々好きな画家でしたが、この展覧会でさらに魅力を再発見したような気がします。画業を追えたのが何よりの収穫でした。

2月21日までの開催です。おすすめします。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )