hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「新 物理の散歩道3」を読む

2010年03月14日 | 読書2

ロゲルギスト著「新 物理の散歩道3」ちくま学芸文庫、2009年11月筑摩書房発行を読んだ。

裏表紙にはこうある。
熱したアイロンを布地に当てれば、熱さは裏側に伝わる。もし服地に霧を吹けば温度はより下がり、肩など丸みのある箇所も裏から手で直接支えられるのでは?ロゲルギスト少年のその推論は大きくはずれた。あやうく参事になりかねない出来事を通し、高熱水蒸気の威力をまさに肌で学習した「しみ抜きとアイロンかけ」。ほかに、魚が銀色に輝く仕組み、コマが首振りから起ちあがり直立する過程の力学、サーフィンの話題から消波・発電のアイデアなどなど。実験をまじえながら常識的な予想を小気味よく履していく。楽しみながら議論が深まっていく科学エッセイ。 解説 米沢富美子


私は、昔、岩波書店の『物理の散歩道』シリーズでロゲルギストの本を面白く読んだ記憶がある。物理の教科書には、理想化した条件での動作の解析例があるが、これは物理法則を説明するためのものにすぎない。この本のように日常の出来事の物理的解析例は教科書、参考書にはほとんどなかった。しかも、雲の上の偉い先生方が、下世話な日常現象を議論するというギャップも面白かった。
本書は、1978年に中央公論社から刊行された本の文庫版だ。

筑摩書房のHPのこの本の紹介から引用する。

ロゲルギスト
物理学者のグループペンネーム。メンバーは磯部孝、今井功、大川章哉、木下是雄、近藤正夫、高橋秀俊、近角聰信の7人。雑誌「自然」に1959年より毎月、科学エッセイを連載。専攻はさまざまだがいずれも議論好き。日常のできごとから興味深いテーマを取り上げ、物理学者ならではの視点で問題を解きほぐした。その エレガントな思考法に魅せられた文系ファンも多い。


目次
眼の中にただようゴミ/大根おろし/松を伐る/しみ抜きとアイロンかけ/水面に立つ奇妙な波/波のりの力学/魚はなぜ銀色か/モーターはなぜまわる/結晶の形はどうしてきまるか/二重生活/コマはなぜ起き上がる

波乗りの力学
海の波を構成する水は、海岸の方に動いていくのではなく、一点で上下運動しているだけと習ったような気がする。実際は、表面に近いところでは小さな円運動して表面の山のところに水を集めている。そして、サーフボードは、水を切る抵抗と波でできた坂を下る力とが釣り合いながら長い距離を進むという。後記には、ボールでもサーフボードと同じことが可能かどうか、水槽を使って実験した結果が書いてある。さすが偉い先生がた。結論は転がりまさつが大きくて波のりはできないということだったのだが。

しみ抜きとアイロンかけ
アイロンの下の濡れタオルは高温水蒸気になって1000倍以上の容積になり、上はアイロンなので下の衣類の中を通り抜けて行く。したがって、アイロン台には通気性が求められる。しみ抜きの原理も同じように説明される。

コマはなぜ起き上がる
コマがなぜ倒れずに回るのか、力学の本にジャイロ効果の説明のなかで解説してあったと思う。安定にいたるまでなどもっと複雑な運動を主に実験によって問題を一歩一歩解決して行く。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

大学での物理の基本ぐらいは知っている理工系の人、あるいはとくに物理に興味のある人でないと、内容は理解できないだろう。しかし、細かい分析の話は飛ばして読んでも、十分面白い。なにげなく見過ごしている日常の出来事を何故かと問いかけられると、「そう言われると不思議」ということがいろいろあり、その秘密をあかしてくれる。細かい理屈の説明は読み飛ばして、筋道だけ拾っても面白い。数式は出てこないので安心して欲しい。

じっくりと落ち着いて物事を正しく考える姿勢の大切さを思い知らされる。そして、それはとても楽しいことだと思う。


コメント
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