伊坂幸太郎著『モダンタイムス 特別版』2008年10月講談社発行、を読んだ。
主人公の渡辺拓海は、疑り深く暴力的で仕事、過去など得体が知れない恐ろしい妻を持つ。システム開発の職場では、論理が通らない無茶苦茶な上司、強引で自分勝手な先輩、真面目すぎ小心な部下に悩まされる。前任者が逃亡し、開発依頼者も不明な不可思議なプロジェクトが彼に回ってくる。どうもある単語を検索した人を探しだすシステムらしい。検索する人を監視し恐怖の脅迫に持ち込む謎の正体は?
初出:漫画雑誌「モーニング」2007年18号~26号
本書は2005年発表の『魔王』の続編にあたる。特別版には、「モーニング」連載時の花沢健吾氏による全イラストを収録してある。
あとがきで著者は、『ゴールデンスランバー』と平行に執筆したので互いに影響しあう双子のような関係にあると書いている。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
私は、コミカルで、軽さのある伊坂さんの文体は好きで、多少の荒唐無稽ぶりは面白いと思う。617ページの大部だが、一気に読めた。
しかし、ハリウッド映画並の少々荒っぽい話の運び、登場人物の漫画的で極端なキャラクターは嫌いな人も多いだろう。
井坂好太郎なる気障な小説家が登場し、解ったようなことを言い、謎を解く鍵があるという作中小説が数ページに渡って引用されているが、ちょっと遊びすぎだ。
無茶な顧客、訳のわからない仕様、なんとかなるだろうとしか言わない上司といったシステム、ソフト開発の苦しみが良く書けていて苦笑し、共感を呼ぶ。さすが元システムエンジニアの伊坂さん。
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