加藤登紀子著『登紀子1968を語る』情況新書001、2009年12月情況出版発行、を読んだ。
登紀子さんがエネルギッシュな若者達の1968年を語る第一幕(75ページ)。
学生運動の崩壊と暴力への変質、そして結婚を語る第二幕(41ページ)。
現役学生相手に1968年が伝えるメッセージを熱く語る第三幕(44ページ)。
上野千鶴子との対話第四幕(35ページ)。
社会に疑問を持ち、異議を唱え、挑戦し、理想を求めた1968年までの世界の若者の戦いが、以降は革命を目指す暴力の中で内ゲバに変質していく。
その後の陰惨な暴力は、そもそもの全共闘運動の中に内在していたと思われるが、登紀子さんは、のびのびとした学生運動を国が暴力的に弾圧したため、学生たちはより政治的、反権力へ流れていったと語る。
ブントに関わっていた登紀子さんは、党の形はとっていてもひとりひとりのいい加減さを許すブントの行き方が好きで、今のインターネットにつながるものがあるという。
(確かに初期の全学連の行き方は魅力的であったが、共同体幻想であったとも思う)
上野千鶴子との対談で、68年の夢のような部分だけではなく、続く後の困難と頽廃の時代を分けて捉えることが出来ないと主張する上野氏に対し、68年の夢の部分を強調し、生き延びる思想を語るお登紀さんは、まさに慈母観音のごとくである
そして、最後に「『かっこよく死ぬより、生き延びてゆく』そんな女性の生命力が明日を変える」と登紀子さんは語る。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
加藤登紀子さんのファンと、この時代に興味のある人にはお勧めできる。ただ、加藤さんは1968年を、その後の陰惨な結末にかかわらず、全共闘運動を理想化したままで、明るく語っている。確かに、何もかも否定的になるより、加藤さんのように肯定できることを力強く語る楽観的な考え方はすばらしい。
本当は、1968年、全共闘を良く知らない人に読んで欲しいのだが、無理だろうな。
加藤 登紀子
1943年中国ハルピン生まれ。
1965年東大在学中に第2回日本アマチュアシャンソンコンクールに優勝し、歌手デビュー。
1972年反帝全学連委員長だった藤本敏夫氏と獄中結婚
「ひとり寝の子守唄」、「知床旅情」、「百万本のバラ」などヒット曲多数。
2000年にUNEP(国連環境計画)親善大使に就任。アジア、オセアニア各地を訪問
1968年、この年だけが特別な年だったわけではないのだろうが、確かに大きな出来事が集中しているような気がしてしまう。ただ、新旧の時代の分かれ目だったのではないだろうか。
1月5日 - チェコでドゥプチェクが第一書記に就任、プラハの春始まる
1月9日 - 円谷幸吉が自殺をする
1月17日 - 米原子力空母エンタープライズ寄港阻止闘争始まる
1月29日 - 東大医学部無期限スト突入。東大闘争始まる
1月30日 - ベトナム戦争でテト攻勢開始
2月6日 - グルノーブルオリンピック大会が開幕
2月21日 -金嬉老が寸又峡温泉の旅館に立て籠もる
3月16日- ベトナムのソンミ村虐殺事件
4月4日 - マーティン・ルーサー・キング暗殺
4月18日 -日本初の超高層ビルである霞が関ビル完成
5月21日 - フランスで五月革命が起こり、かつ頂点となる
5月27日-日大20億円使途不明金摘発され、全学共闘会議結成
6月5日 - ロバート・F・ケネディ暗殺
6月15日-安田講堂占拠
6月23日-フランス総選挙でド・ゴール勝利
8月20日-ソ連軍がプラハの春を弾圧
10月17日 - 川端康成がノーベル文学賞受賞
10月21日 - 国際反戦デーで新宿駅を学生が占拠
11月5日-米大統領選挙でニクソン当選
12月10日 - 東京都府中市で三億円強奪事件発生