久坂部羊著『祝葬』(2018年2月13日講談社発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
「もし、君が僕の葬式に来てくれるようなことになったら、そのときは僕を祝福してくれ」自分の死を暗示するような謎の言葉を遺し、37歳の若さで死んだ医師・土岐佑介。代々信州を地盤とする医師家系に生まれた佑介は、生前に不思議なことを語っていた。医師である自分たち一族には「早死にの呪い」がかけられているという―。簡単に死ねなくなる時代につきつけられる、私たちの物語。
医師の手島崇が、大学時代の親友・土岐(とき)佑介の葬儀のため信州に向かうところから物語は始まる。
土岐一族は医師ばかりだが、全員早死にだった。
病院を創立した曽祖父の騏一郎は55歳で肝硬変で亡くなり、彼だけは早死にとは言えなかったが、
大叔父(騏一郎の次男)の長門は50歳で入浴中に溺死、
長門の息子の覚馬は52歳で肺がんで亡くなり、
祖父(騏一郎の長男)の伊織は52歳の時に奥穂高で滑落死、
父・冬司は49歳で胃がんで死に、
冬司の次男・佑介も37歳で突然死んだ。長男・信介だけは91歳まで生き永らえたが……。
祝葬
佑介の葬式に向かう途中で、手島は、祐介が「もし、気味が僕の葬式にきたくれるようなことになったら、そのときは僕を祝福してくれ。」と語っていたのを思い出す。また、「(結婚は)おれはいいよ。どうせ長生きしないから」「土岐家には早死にのDNAがある」とも。
真令子
川島芳美は母と伊織の母が姉妹で、幼い時から5歳上の伊織が好きで、大きくなってもその想いは続いた。19歳のとき、伊織は真令子と結婚してしまい、翌年、冬司が生まれた。真令子が病で死にかけて以来、伊織は真令子に異常な愛情を注ぐようになる。一方で真令子は……。芳美は想いを隠して伊織の相談に乗る。そして……。
ミンナ死ヌノダ
病院を創立した騏一郎は、是枝一族が牛耳る地元医師会と対立した一匹狼だった。覚馬は乱暴な治療を繰り返したという騏一郎の悪名について、そんなはずがないと、昔の人を訪ねて調べ始めた。佑介は昔のカルテから噂は事実だろうと冷静だった。
希望の御旗
冬司の妻となり、信介と佑介を医者にした信美の話。冬司の「がんは早く見つけて、早く切る。それががん撲滅の最短・最善の方策だ」と考え、切って切って切りまくって、病院も繁盛する。
忌寿
手島は88歳の現役医師として賞賛の記事になっていた。しかし、体はボロボロだったし、2030年以降、免疫療法が進歩して外科手術は不要になり仕事らしい仕事はなくなっていた。あくまで長生きしようとする患者たちが登場し、「長生きは良いことか、望ましくないことか」が問われる。
冬司の長男・信介が91歳になって登場するが、その姿は……。
初出:「メフィスト」2009年Vol.1、2015年Vol.3、2016年Vol.2、Vol.3、2017年Vol.2
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)
がんは体力などものともせずに飽くまで切り取るべきだとか、ただただどうなっても長生きしたいなどと、今どき正面切ってそんなこと言う人もいないだろうと思う。著者はもちろん否定しているのだが、テーマとしては、古すぎる。
5編よりなる連作短編だが、最後の2編はテーマは同じでも毛色が変わっており、連作には不向き。