柚月裕子著『臨床真理』(2009年1月24日宝島社発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という二十歳の青年を担当することになる。司は、同じ福祉施設で暮らしていた少女の自殺を受け入れることができず、美帆に心を開こうとしなかった。それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司はある告白をする。少女の死は他殺だと言うのだ。その根拠は、彼が持っている特殊な能力によるらしい。美帆はその主張を信じることが出来なかったが、司の治療のためにも、調査をしてみようと決意する。
美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久志の協力をえて、福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。しかし、調査が進むにつれ、おぞましい出来事が明らかになる。
『このミステリーがすごい!』大賞第7回大賞受賞作。
柚月裕子(受賞時、著者名は藤木裕子で、タイトルは「臨床真理士」)のデビュー作。
知的障害者入所更生施設「至誠学園」
藤木司:入所者。20歳。精神不安定で急に嘔吐。彩と仲が良い。共感覚者で人の声が色に見え、感情が分かる。
水野彩(あや):16歳。入所者。軽い精神遅滞、失語症、適応障害。司と仲が良い。
安藤守雄:「至誠学園」施設長
可奈:入所者。派手な、決まった服装しかしない。
東高原病院精神科
佐久間美帆:臨床心理士。29歳。統合失調症の弟・達志の自殺を防げなかった。
内田:看護師主任。30年のベテラン。
湯守遥:看護師。24歳。趣味は合コン。
高城(たかぎ):精神科医。美帆の上司。
栗原:県警のハイテク犯罪対策室。美帆の高校の同級生。
梶山健一:救急隊隊長、彩を搬送中に大けがをする。 新田・土居:救急隊員
大木戸隆:東郷製作所の人事部長
西澤利明:障害者就労援助センターの人材派遣部長
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)
読み始めてすぐ大筋が読めてしまうのに、中盤以降の展開が遅い。イライラするくらい主人公はいつまでたっても気がつかない。
主人公の向こう見ずな行動は現実感を損なう。危険が予想されるのに一人で行動したり、倉庫にこっそり忍び込んだり、いきなり訪ねていって無遠慮な質問したり、医療従事者なのに個人情報の扱いに無神経で、警察情報も平気で横流しする。
クライマックスのグロく、気持ち悪いシーンが何ページも続くのには唖然。
でも、この後の柚月さんの活躍ぶりは見事で、新人発掘の難しさがわかる。まあ、ともかく一気に読んでしまったのだがら、読ませる力、書く力はあったということは確かだったのだろう。
また、忘れて、覚えていなかった漢字
霙:みぞれ