関眞興著『キリスト教からよむ世界史』(日経ビジネス人文庫せ3-4、2018年2月1日日本経済新聞出版社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
古代ローマ時代から現在まで、2000年におよぶ歴史をもつキリスト教。地中海世界の「新興宗教」が、いかにして世界的な宗教になったのか? なぜ各派にわかれたのか? 世界史にどのような影響を与えたのか? 予備校の元世界史講師が「カノッサ事件」や「宗教戦争」など30のトピックでわかりやすく解説。
関眞興(せき・しんこう)
歴史研究家
1944年三重県生まれ。東京大学文学部卒業後、駿台予備校の世界史講師となる。
2001年に退職し、現在「漫画版 世界の歴史」シリーズ、「中国の歴史」シリーズ(以上、集英社文庫)の構成を手がけるなど、歴史関係の本の著作・監修を多く行っている。
主な著書・監修書に『読むだけ世界史』(学研)、『図解でスッキリ! 世界史「再」入門』『30の戦いからよむ世界史』(以上、日本経済新聞出版社)など。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
様々な機会に入ってきたキリスト教に関するバラバラの知識を、キリスト史全体を通して再確認するには良い。要領よく、パラパラ読んで、キリスト教史を通してユダヤの歴史、ヨーロッパ史を復習したい私には最適な本だった。
だだ、あまりにも多くの事柄が1件1行程度で羅列されていて、事典的なこの本は、教科書的だ。なにしろ著者は駿台の元教師だ。細かい事柄が多いので、歴史の大きな流れが一見できない欠点はある。
さらに、確かに名文ではないし、最初からしみじみ読む本ではない。しかし、短文で、内容が的確で、頭に入りやすく、この本を読む目的が、パラパラと歴史再確認なら、それはそれでいいのだ。
以下、私のためのメモ。
第1章 キリスト教誕生前夜
・紀元前1500年以上のユダヤ人の歴史の上にキリスト教が誕生し約2000年経過した。
・ 前1500年頃、パレスチナ地方にユダヤ人の祖先にあたるヘブライ人が住み、唯一神ヤハウェを信仰していた。
・ 飢饉などでヘブライ人の一部がエジプトに移り、奴隷同然に暮らした。これを「脱出(エクソダス)」させたのが予言者モーゼ。ヤハウェがシナイ山でモーゼに与えたのが「十戒」
・ パレスチナで前1000年頃、ダビデ王が国家を建設し、次のソロモン王のとき古代ヘブライ王国は繁栄しエルサレムに神殿が建設された。ソロモン王の死後、北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂した。
・ イスラエル王国はアッシリアに滅ぼされ、ユダ王国の人々はバビロニアの連行された(バビロン捕囚 前597~538)が、アケメネス朝ペルシャ帝国によって解放された。
・ アレクサンドロス後の西アジアにできたセレウコス朝はユダヤ教を禁止したので、ハスモン家のマカベが武力抵抗しエルサレムを解放した。前140年、ハスモン朝が成立。
・ 前63年、ローマの支配下に入り、ハスモン朝の大臣ヘロデはローマからガリラヤ知事に任命された。
・ ヘロデは将来の「ユダヤの王」が生まれることを恐れたヘロデはベツレヘムの2歳以下の赤子を皆殺しにする。
・ 総督として赴任したポンティウス・ピラトゥス(在職26~36)以降、ユダヤ人の反ローマ感情が増大し、イエスの処刑もこの時代(27~30頃)に行われた。
第2章 イエスの死と復活
・ 「イエス」は一般的な名前。「キリスト」は「メシア」のギリシャ語訳で「救世主」。「イエス・キリスト」とは「ナザレのイエスがキリストである」
・ 原始キリスト教団は、反ユダヤ教的なギリシャ語を話すへニスタイと、ペテロなど12使徒を中心とするヘブライ語を話すヘブライオイが対立した。
第3章 教えは異邦人へ
・ イエスから指名を受けたペテロはエルサレム教会の中心となり、ネロ帝の下で処刑され、初代ローマ教皇とされた。4世紀、埋葬された場所にサン・ピエトロ(聖ペテロ)寺院が建設された。
・ パウロは目が見えなくなり、回心し(サウロの回心)、視界を遮っていたもの(鱗)が落ち目が見えるようになった(目から鱗の由来)。
・ パウロはユダヤ人以外にも積極的に布教し「異邦人の使徒」と呼ばれる。
第4章 帝国の軍神
・ 313年、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世(西方正帝)とリキニウス(東方正帝)が連名で、全帝国市民の信教の自由を保障した勅令を発布した。
・ 皇帝ユリアヌス(背教者)はキリスト教聖職者の裁判権を剥奪し、一般国民同様に税を徴収した。
・ テオドシウス帝(在位379~395)は381年キリスト教を国教化。長男アルカディウスが東ローマ帝国、次男ホノリウスが西ローマ帝国皇帝とした。
・ キリスト教会は国教化とともに侵入者に対する防衛のための戦争を「正戦」とした。
第5章 神なのか神の子なのか
・ 325年、コンスタンティヌス大帝はニケ―アで公会議を開き、イエス・キリストは人性だけか、神性も持つのか議論され、神性を持つと結論づけられたが、その後も議論は続いた。381年コンスタンティノープル公会議後、431年エフェソス公会議で、「イエス・キリストは真に神であり、また真に人である。両性は一つの人格、一つの本質の中に併存する」ということになった。
第6章 立ち向かう教皇
・ 476年傭兵隊長オドアケルが西ローマ皇帝オムルス・アウグストゥルスを廃位さけ、帝国は滅亡した。
第7章 帝国の分裂と教会の危機
・ 726年東ローマ帝国皇帝のレオ3世が「偶像崇拝禁止令」を出し、ローマ教会は反対した。
第8章 教皇権と皇帝権
・ 800年フランク王国のシャルル(カール)が教皇レオ3世によってローマ皇帝(西方の)を戴冠した。これが「ローマの伝統」「キリスト教」「ゲルマン民族」というヨーロッパの成立とされている。
第9章 修道院と農業改革
第10章 カノッサ事件の勝者とは
・ 1076年、皇帝ハインリッヒ4世は教皇グレゴリウス7世の廃位を宣言。反対に教皇も皇帝を破門した。神聖ローマ帝国内の反皇帝勢力が破門が解かれない限り新皇帝を選ぶと宣告。面会を拒否する教皇に皇帝は裸足でカノッサの城門の外に三日三晩立ちつくした。破門を解かれドイツに戻って反皇帝派を抑え、ローマに進軍し、教皇を憤死させた。
第11章 十字軍と東西の交流
第12章 失われた過去の発見
第13章 3人の教皇
第14章 長靴を巡る戦争
第15章 パンとワインの否定から始まる
第16章 祈?から宣教へ
第17章 新興国と新教徒
第18章 布教の新天地
第19章 宗教戦争
第20章 武器を売り福音を伝える
第21章 せめぎあう科学と宗教
第22章 自由の国を求めて
第23章 市民の戦い 英雄の戦い
第24章 教皇領が消えるとき
第25章 近代によみがえる叙任権闘争
・ ドイツでは、第二次大戦後、キリスト教民主同盟(CDU)が成立する。カトリックもプロテステントも区別せず、非キリスト教徒にも門戸は開放されている。「キリスト教」とはキリスト教精神を示すためのもので、宗教を強制してはいない。
第26章 世界大戦と教皇の苦悩
第27章 複雑化する中東
・ アメリカにおけるユダヤ人の人口は2%がが、大富豪の30%をユダヤ人が占めている。
第28章 東の王が求めるものとは/第29章 東欧革命と空飛ぶ教皇
第30章 現代の教会
・ 現教皇のフランシスコは、名前が初めてで、アメリカ大陸出身、イエズス会士も初めて。初めての名には1世は付けない。後の教皇が同じ名を名乗ると、1世が付くようになる。