伊岡瞬著『悪寒』(2017年7月10日集英社発行)を読んだ。
「悪寒 伊岡瞬 集英社 WEB文芸 RENZABURO」にはこうある。
大手製薬会社「誠南メディシン」に勤める藤井賢一は、会社の不祥事の責任を一方的に取らされ、東京から山形の片田舎にある関連会社「東誠薬品」に飛ばされた。それから八か月ほど経ったある夜、東京で娘・母と暮らす妻の倫子から、不可解なメールを受け取る。
<家の中でトラブルがありました>
すぐさま倫子に電話をするが、繫がらない。その数時間後、賢一の元に警察から電話が入る。「藤井倫子を傷害致死の容疑で逮捕しました」。妻が殺した相手は、賢一にとっては雲の上の存在、「誠南メディシン」の常務、南田隆司だった――。賢一の単身赴任中に、一体何が起きていたのか。その背景には、壮絶な真相があった。
単身赴任中に、妻や娘と話が通じない状態となり、そして突然、メールが飛び込む。
「家の中でトラブルがありました。途中まで洗濯はしたのですが、妹に相談したら警察が来るまで掃除をしないほうがいいと言うので、床はそのままにしてあります。申し訳ありませんがラグにシミが残るかもしれません。こちらはなんとかなりますので、お仕事を優先あせてください」
賢一はともかく東京へ急ぐ。
藤井賢一:大手製薬会社「誠南メディシン」から山形酒田市の関連会社「東誠薬品」に左遷。
松田支社長:「東誠薬品」での賢一のいじわるな上司。45歳。
高森久美:「東誠薬品」・営業課。賢一の部下。
南田隆司:「誠南メディシン」常務。会長の次男。
南田信一郎:「誠南メディシン」専務から海外子会社へ左遷。会長の長男。
藤井倫子(のりこ):賢一の妻。40歳。結婚前に「誠南メディシン」勤務。旧姓滝本。
藤井香純:賢一・倫子の一人娘。賢一に反発。
藤井智代:賢一の同居している母。認知症。
滝本優子:倫子の妹。独身。
滝本正浩:倫子と裕子の父。71歳。
真壁:警視庁捜査一課。三十代半ば。無表情。
白石真琴:優子の弁護士
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)
全体として、読みやすい。前半は、いきなりの謎に、何だ、何があったのだと、ついつい読み進めてしまう。しかし、最後の謎解きの部分がバタバタで、ミステリーとしては肝心な点で失敗だと思う。
上司たちの罪を被り、派閥争いに巻き込まれて左遷された主人公・賢一が、単身赴任先で上司から嫌がらせを受けて苦労する話が続き、うんざりする。こんな話を延々と書いてどうするのか。あっさり退社はできなくても、心の中ではこの野郎と思わないのだろうか。ウジウジする賢一にイライラする。
謎解きの部分も、二転三転する結果に、「おいおいま、たかよ!」と乗れなくなってしまった。こんな方法では誰だって犯人にすることができるじゃん!