酒井順子著『家族終了』(2019年3月31日集英社発行)を読む
集英社の「よみタイ」にはこうある。
親が好きですか? 自分の子供をかわいいと思いますか? 夫婦で同じお墓に入りたいですか? 一緒に暮らしたいのは誰ですか――?
「日本の家族」の象徴である天皇家が抱える諸々、50歳時に未婚の割合を示す「生涯未婚率」(45〜49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均)の上昇、事実婚、シングル家庭、同性婚……近年の家族をめぐる状況は多様化しました。
『負け犬の遠吠え』『子無しの人生』『おばさん未満』『男尊女子』『百年の女』など、話題作を発表し続ける酒井順子氏。未入籍のパートナーと暮らし、両親、実兄をすでに見送ったからこそ見えてくる家族の諸問題とは。日本の家族観の変遷を辿りながら、現在を考察、未来予測まで言及します。
酒井さんは、両親と兄、祖母という3世代5人家族で生まれ育った。祖母、父、母と亡くし、一昨年兄も他界。籍を入れていない「同居人」、兄が残した姪以外、子どももなく、53歳の酒井さん「私にとっての『家族は終了」した。
草津白根山噴火のニュースで見た光景に酒井さんはびっくり。ゴンドラの中で救助を待つ男性が父親に電話し、「ありがとう」でなく、「パパ、愛してるよ!」と言った!(「パパ、愛してる」)。
男の子のママからはたまに、ドキッとする話を聞くものです。
「将来、私から離れられなくなるように育ててるのよ」(「パパ、愛してる」)
……今時の親や祖父母は、子や孫に迷惑をかけることをよしとしないのですから。……
子や孫にかけた愛や心配がこの先、自分に戻ってはこないかもしれないけれど、それでも思いを寄せずにはいられない。経済の原理からは離れた感情のやりとりがなされる場こそが、家族というものなのでしょう。(「心配されたくて」)
加齢と共に胃弱となり、冷え性の酒井さん、
母親が今も生きていたなら、
「お母さんも、色々大変だったのネ!」
と、互いにしかわからぬ「体調あるある」を話し合ってみたいものよ、と思います。(「毒親からの超克」)
初出:集英社学芸部サイト「学芸・インフィクション」2018年1月~9月
集英社ノンフィクション編集部サイト「よみタイ」2018年10月~2019年2月
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
密着した母と息子、友達の父と息子など最近の家族の動向についてはその通りだと思う。読まなくてもそう思うのだが、引用される例が適切、驚きで面白い。
その他、酒井さんのあくまで女だった母親などユニークな過去の家族の話や、酒井さんが結婚しない同居人の話は、どれどれと下世話な気持ちで読んでしまった。私が愛読している酒井さんだから読んだだけで、一般的に面白いとは言えない。