一穂ミチ著『スモールワールド』(2021年4月20日講談社発行)を読んだ。
講談社による特設サイト(本編未収録の特別掌編「回転晩餐会」の全文と朗読を掲載しています)
第1話「ネオンテトラ」
夫との関係に鬱々としていた美和は、ある夜、一人の中学生男子と出会う。水槽の中で泳ぐペットの熱帯魚と孤独な少年を重ねながら、二人の逢瀬は続けられ……。
第2話「魔王の帰還」
鉄二の平和な高校生活はある朝くずされた。泣く子も黙る恐ろしい姉ちゃんが出戻ってきたのだ。傍若無人でめちゃくちゃな姉だが、その裏には悲しい理由がありそうで……。
第3話「ピクニック」
生後十ヵ月の女児が不慮の死を遂げた。幸せな家族に向けられる恐ろしい疑惑――赤ちゃんを殺したのは身内ではないのか。衝撃のラストが待ち受けるミステリー。
第4話「花うた」
兄を殺され、天涯孤独の身となった深雪は、一通の手紙を送ることに。宛先は、服役中の「兄を殺した加害者」本人だった。往復書簡がもたらす、罪と罰と赦しの物語。
第5話「愛を適量」
くたびれた中年教師の慎悟は、十数年ぶりに我が子と再会する。「しばらく置いてほしい」と言う子どもとの不思議な共同生活で、家族の時間を取り戻すことはできるのか。
第6話「式日」
高校時代から仲の良かった後輩の父親が亡くなった。急遽参列することになった葬儀への道中、後輩と自分との間に生まれてしまった、わだかまりの正体に気付いていく……。
第165回直木賞にノミネート
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)
どの話も読み始めるとすぐ、その世界へ引き込まれてしまう。そして、途中で「えっ、そうなの」と驚かされてしまう。
どれもしみじみとした、いい話なのだが、泣かせるところもあったり、未来を感じさせたり、あるいは絶望の先に慰めが見えたりする。
人のままならさ、を描いているが、乾いた記述に優しさがあって、救われる。いい小説を読めたことに感謝!
それにしても、作者の一穂サキさんって、しばらくBL(ボーイズラブ)小説を書いていたようだが、三浦しおんさんといい、BL小説って読んだことないのだが、良い小説を書くためのひとつのルートなのだろうか?
私のメモ
金魚すくいのコツ(p70)(さんざ褒めといて、抜き書きがなんで「金魚すくいのコツ」なんだよ!)
「濡れた部分と乾いている部分があるから破れやすくなるんです。こうして全部濡らしちゃえば意外と大丈夫。構えは水面に対して水平じゃなくて縦、魚を追いかけるんじゃなくて迎えに行って、器の中に誘導する感じで‥‥」