道尾秀介著『カエルの小指 a murder of crows』(2019年10月23日講談社発行)を読んだ。
「久々に、派手なペテン仕掛けるぞ」詐欺師から足を洗い、口の上手さを武器に実演販売士として真っ当に生きる道を選んだ武沢竹夫。しかし謎めいた中学生・キョウが「とんでもない依頼」とともに現れたことで彼の生活は一変する。シビアな現実に生きるキョウを目の当たりにした武沢は、ふたたびペテンの世界に戻ることを決意。そしてかつての仲間――まひろ、やひろ、貫太郎らと再集結し、キョウを救うために「超人気テレビ番組」を巻き込んだド派手な大仕掛けを計画するが……。
60万部のヒット作『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』の続編で、今回も二重、三重のペテンが仕掛けられている。
俺は悪党だ。俺は悪党だ。俺は悪党だ。
墓を見下ろしながら武沢竹夫は胸の中で繰り返していた。
……
「……もう1回だけ、やらせてくれ」
……
「久々に、派手なペテン仕掛けるぞ」
と始まる。
副題の 「a murder of crows」 はカラスの集団という意味。
以下の6章から成る。
THUM/Finding him
INDEX FINGER/Go this way
MIDDLE FINGER/Fxxk it off
RING FINGER/They need on ointment
PINKY/Crow’s “pinky”
PALM/A murder of crows
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)
最近の評価傾向として甘めになっていると言い訳付きの五つ星。
騙し騙され、敵か味方か疑心暗鬼。とくに終盤の二転三転に注意。
詐欺まがいの実演販売士で生計をたてながら、必死にまっとうに生きている武沢が、どうしても一発ひっかけてやらねばならぬと渾身の詐欺を決心しながら、結局……。人の良い詐欺師のキャラがいいね!
中学生のくせに大人を騙し、悲惨な過去を背負って心を見せないキョウの謎が深い。 他のメンバーは相対的に活躍の場が少なく前作の方がキャラが目だっていた。
途中までどこかで読んだような気が薄々したのだが、前作『カラスの親指』のことはこのブログを書くまで思い出さなかった。なにしろ12年前だ、記憶が無くても正常に決まってるのだ。ということは前作を読んでいなくても面白いということ。
武沢竹夫:詐欺師から足を洗い、実演販売士で生計をたてている。ミスターT。かって妻・雪絵と娘・沙代がいた。
まひろ:元プロのスリ師。31歳。過去、武沢に救われた。
やひろ:まひろの姉。38歳。4年前に夫を亡くす。
貫太郎:やひろの夫。元マジシャン。
テツ:貫太郎とやひろの子ども。小学6年生。
キョウ:中学2年生で、謎の依頼人。
寺田未知子:キョウの母。武沢は15年前に出会っていた。
ナガミネマサト:味知子をだました詐欺師
瀬谷ワタル: TV番組「発掘! 天才キッズ」の人気出演者
蛙化 (かえるか) 現象。思いを寄せていた相手が振り向いてくれたとたんに冷めてしまう現象。『カエルの王子様』では最後にカエルが王子様になるが、蛙化現象はその反対で、王子様がカエルに見えてしまう。
人間は一人じゃないんですからね。一人だけを殺すことなんてできませんよ。(p63)