知念実希人著『死神と天使の円舞曲(ワルツ)』(2022年5月30日光文社発行)を読んだ。
光文社特設サイトのあらすじ
『我が主(あるじ)様』の命により、動物の姿を借りて地上に降り立ったレオとクロ。
2匹が地上に暮らし始めてから、はや数年が経過した。レオはホスピスの看板犬として、クロは若きレディのシェアメイト(?)として、和やかな日常を送っている。
……しかし最近、にわかに街が騒がしい。
山中で「人魂」を目撃したという噂が飛び交い、不審火事件が相次いでいるのだ。
この街で何が起きているのか。すべての謎が一つに繋がったとき、シリーズ最大のピンチが2匹に迫っていた――。
『優しい死神の飼い方』が死神レオの話で、続編『黒猫の小夜曲(セレナーデ)』が死神クロの話だった。本編はその続き。
死神、本人曰く高貴な霊的存在であるレオは、死者を『我が主(あるじ)様』の天国へと導く道案内の仕事をしていた。しかし、人は未練を残して死ぬと「地縛霊」となって地上に留まってしまう。そこで、死神レオは、人の未練を解消すべく、上司によって人間界に犬の姿(ゴールデンレトリバー)となって左遷されてしまった。彼はホスピス『丘の上病院』で「レオ」と名付けられて飼われることになった。
死神クロも同様に黒猫の体を借りて地上に降り、白木家の飼い猫クロとなった。
第一章 黒猫と薔薇(ばら)の折り紙
クロはある日、自殺しようとしている料理人・平間大河に出会う。彼は婚約者・柏木美穂に拒絶され、夫・真柴直人と娘・穂乃花もいると分かってしまう。さらに彼女に自殺されてしまった。クロは彼の記憶を覗いてみると……。
第二章 黄金の犬と天使の声
レオが暮らすホスピス「丘の上病院」に、末期がんの患者・柏木美穂がやって来た。まるで“抜け殻”のような様子で、さっそくレオは彼女の「未練」を探りはじめる。虐待された様子の穂乃花は……。
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第三章 死神たちのダンス
再会したレオとクロは、互いに激しく舌戦を展開するが、謎の存在に対し激しい共闘を繰り広げる。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
人間より優れた霊的存在である死神が、人間のペットである犬や猫の形になってしまい、「しゅーくりーむ」や「おしゃしみ」を与えられると、つい悔しいことに、よだれを垂らしたり、人間におもねってしまう。そして、残酷で卑怯なくせに、ときにやさしい思いやりを見せ、高潔な存在となる人間を、死神は好きになってしまう。このあたりの基本的流れはこのシリーズの微笑ましく、素晴らしい所だ。
しかし、各章の厳しい状況をなんとか潜り抜けて結末に至る涙をさそう話の筋は平凡だ。