伊坂幸太郎著『マイクロスパイ・アンサンブル』(2022年4月25日幻冬舎発行)を読んだ。
幻冬舎の特設サイトにはこうある。
見えていることだけが、世界の全てじゃない。知らないうちに誰かを助けていたり、誰かに助けられたり。失恋したばかりの社会人一年生と、元いじめられっこのスパイ一年生。二人は、さまざまな仕事やミッションに取り組むが、うまくいくことばかりではなくて……。
猪苗代湖で2015年から開催されている音楽フェス「オハラ☆ブレイク」のために、伊坂幸太郎さんが毎年書き続けた短編「猪苗代湖の話」。会場でしか手に入らなかった7年分の連作短編が満を持して書籍化!
失恋したばかりの社会人と、元いじめられっ子のスパイが住むまったく別の世界。二つの異なる世界の話が交互に進み、偶然に何かが揃ったときに扉が現れ、行き来できるようになる。互いの世界が交錯して、知らないところで知らない人を助けたり、助けられたり。現実のこの世界も、実はいろいろな世界と繋がっているのかもしれないと思わせるおとぎ話風の物語。
小さな世界
エージェント・ハルト:国家のために働く諜報員。
僕:エージェント・ハルトに助けられたいじめられっ子。ハルトの訓練を受ける。
エージェント・オハラ:ハルトの相棒の諜報員。のんびりしていてミスが多い。
蝉ジェット、カゲロウジェット:巨大化させた蝉やカゲロウの下に籠をつけ、マイクの音で操縦して飛ぶ。
普通の世界
松嶋:新人会社員。仕事ができなくて苦労。
門倉課長:悪くなくてもすぐに謝ってしまうぺこぺこ課長。
小森課長:女性課長。
天野さん:松嶋が気になる2歳上の女性社員。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
ファンタジー小説というか、御伽噺風の小説は私の好みでないため点が辛くなった。
とくに前半、みじめな新人サラリーマンの話と、空を飛ぶ小人スパイの話という全く異なる話が平行して進むので、いずれ関連すると思っていても、いやになる。
フェス参加グループの歌詞を間に挟んでいるのも、洒落た雰囲気よりも無理感が強かった。
その場で読み捨てのつもりで書いたミニ小説を積み重ねた成り立ちなので、どうしてもバラバラ感があって、それなりの即興的面白さはあっても、いつもの伊坂流の、濃いキャラの登場や、余裕のユーモアが十分でない。