東野圭吾著『希望の糸』(2019年7月5日講談社発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。(講談社BOOK倶楽部)
東野圭吾の最新長編書き下ろしは、「家族」の物語。
「死んだ人のことなんか知らない。
あたしは、誰かの代わりに生まれてきたんじゃない」
ある殺人事件で絡み合う、容疑者そして若き刑事の苦悩。
どうしたら、本当の家族になれるのだろうか。
閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。
捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。
災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。
容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。
加賀恭一郎シリーズということになるのだろうが、本人の登場はわずかで、従兄弟の松宮脩平が主人公。
汐見行伸:長女・絵麻(小6)と長男・尚人(小4)は新潟地震で死亡。立ち直れない行伸と妻・怜子は妊活で体外受精を試み、萌奈が生まれる。やがて、怜子も不治の病に。現在62歳。年頃に近づく萌奈とのコミュニケーションに悩む。
芳原亜矢子:金沢の料亭旅館「たつ芳」の女将。40歳独身。父の遺言状の最後に聞いたことのない「松宮脩平」の名を見る。
芳原真次(まさつぐ):亜矢子の父。妻・正美の婿養子で、東京へ料理修業中、正美の事故で「たつ芳」に戻り料理長。正美の交通事故死後、経営者へ。現在死の床にある。
脇坂:真次の友人で弁護士。
松宮脩平:加賀恭一郎の従兄弟。相棒は所轄の若手の長谷部。母親は館山に住む克子で、恭一郎の父・隆正の妹。
加賀恭一郎:3年前に日本橋署から捜査一課に復帰。
花塚弥生:刺殺される。自由が丘の喫茶店「弥生茶屋」経営。51歳。40歳で離婚。ひと月前にジムとエステに入会。顧客に汐見行伸がいた。
綿貫哲彦:弥生の元夫。55歳。製薬会社の営業部長。
中屋多由子:綿貫の内縁の妻。介護施設勤務。
真次はかって言ったという。「たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると思えたら、それだけで幸せだって。その糸がどんなに長くても希望を持てるって。だから死ぬまで、その糸ははなさない」
本書は書き下ろし
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
東野さんには珍しい親子の愛をめぐる感動もの。いつものように面白く一気読みできるのだが、後には何も残らない。それが東野さんの良い所。
犯人推理は物足りないし、犯人探索より親子の関係をたぐっていくのが話の流れ。加賀恭一郎の活躍の場はほとんどなく松宮を指導する態度がやたら偉そう。
良い女・芳原亜矢子を登場させたのだから、色っぽい話が出てこないのは肩透かし。