東野圭吾著『架空犯(かくうはん)』(2024年11月1日幻冬舎発行)を読んだ。
特設サイトの内容紹介(主な登場人物、少々の動画、物語の舞台などの紹介も)
誰にでも/ 青春があった/ 被害者にも/ 犯人にも、/ そして/ 刑事にも。
都内の高級住宅地で起こった火災。
焼け跡からは都議会議員と元女優の夫婦の遺体が発見された。
当初無理心中と思われていたが一転、殺人事件に様変わりした。
警視庁捜査一課の五代は所轄の刑事、山尾と捜査を始めることになるが———。
華やかな人生を歩んできた二人に一体何があったのか。
『白鳥とコウモリ』とは全く別の物語だが、同じ主役・五代刑事が活躍する457頁の長編。
あらすじ
都内の高級住宅地の放火事件の現場から、ソファーで首に布を巻き付けた藤堂康幸の遺体が発見された。康幸は政治家一族で65歳の都議会議員だった。さらにバスルームで首を吊った姿の藤堂江利子の遺体が発見された。江利子は双葉江利子という名で知られた元女優だった。
捜査会議が開催され、夫妻は窒息死で、妻は背後から絞殺された後、ロープを首にかけて吊るされたと推定され、無理心中に見せかけた第三者による犯行であることが決定的になった。
五代は事件の被害者の人間関係を捜査する鑑取り(かんどり)捜査班で、57歳の所轄署・生活安全課の警部補・山尾と組むことになった。
捜査が進む中、「藤堂夫妻の非人道的行為に対し制裁を加えた」との犯行声明と、その証拠品を3億円で買い取れとの脅迫状が届く。やがて、犯人から、「藤堂康幸のタブレットを持っていて、その中の写真をメールに添付したから、3千万円でタブレットを買い取れ」との要求が出される。
五代は、藤堂(旧姓深水)江利子の高校時代を探り、薄紙をはぐように徐々に……。
たどり着いた犯人は実質的に自供するのだが、裁判で勝てる決定的証拠がない。このままでは検察は起訴しないし、五代たちは拘留期限が迫ってくるという立場に追い込まれる。
主な登場人物
五代務:警視庁捜査一課巡査部長。数々の実績を上げて、上司の信頼あつい。上司は筒井でその上が桜川。
山尾陽介:所轄署生活安全課警部補。位は五代より上。観察眼は鋭く、表情は乏しい。
藤堂康幸:死亡。都議会議員。元社会科高校教師。第一秘書は望月。後援会会長は幼馴染の垣内。
藤堂江利子:死亡。康幸の妻。元女優。旧姓深水。康幸の元生徒。事故で両親を亡くし、叔父夫婦に預けられる。
榎並香織:藤堂夫妻の娘。妊娠中。30歳。次回選挙で立候補予定。
榎並健人:榎並グループの御曹司で榎並総合病院副院長。
本庄雅美:江利子の女優時代からの友人。
今西美咲:東都百貨店外商員。本庄雅美や江利子が主な客。
平塚園長:「春の実学園」園長。
本作品は、『小説幻冬』2023年3月号~2024年9月号までの連載に加筆・修正し、書下ろしを追加。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
最初からすんなりと読み始めて、そのままスイスイ読んでしまう。相変わらずの読みやすい東野さん。魂を揺さぶるような感動はないが、「ええ、意外、意外!」「う~ん、どうなるの?」など呟きながら、457頁、読まされてしまった。
五代は、頭脳明晰な刑事というよりは、相手のちょっとした仕草を感良く捉えて見逃さず、かつ地道な捜査を積み重ねて、小さな手がかりをつなげて、一つ一つ壁を突破していく。着実に犯人に近づいていくので、一緒に捜査している気分になってしまう。五代と不審な相棒との駆け引きも、スリルがあって面白い。
都議会議員の行動など多少、はてなと思う点、小さな破綻??はあっても、いいじゃないと思えてしまう。
東野圭吾作品は約90以上あるが、電子書籍化されているのは8作品。