黒川伊保子著『夫のトリセツ』(講談社+α新書 800-2 A、2019年10月17日講談社発行)を読んだ。
「第1章 神は、夫婦を別れさせようとしている」
世の男性たちは、母性とは、ひたすら優しく穏やかなものだと思い込んでいる。なんなら、自分も子どものように甘えられると思っている。とんでもない。母性とは、子どもを育て抜くための生き残り戦略だ。当然、大人の男に対しては、苛立ち、厳しくなる。妻たちは、命がけで「母」を生きている。母性を美化されても、迷惑なだけだ。
「第2章 使えない夫を「気の利く夫」に変え方法」
なにせ、この国の男たちは、こちらがあげた呼び水にさえ、うまく応えられない。…
実はこの対話術、本当は母親が教えないといけないのだ。
「せめてこの日(記念日)だけは」とか「せめてこんなとき(具合が悪いとき)だけは」、言わなくてもやってくれることを夫の愛の踏み絵にしてしまうと、確実に絶望する。…行きたいレストランの電話番号を夫に渡して、…具体的に頼もう。
男性は、結論のわからない話に耐性が低い。疲弊してしまうのである。…以後、妻の話がモスキート音として聞こえてしまうわけ。……男性と話すときは、結論(結論を出すための会話なら目的)から言おう。
「第3章 ひどい夫を「優しい夫」に変え方法」
身体拡張感覚の強い男性脳は、妻をも、そのように感じてしまうのである。自分の身体の一部のように。だから、褒めないし、お礼をいわないのだ。自分の腕に「よくできたね」と言わないように、自分の心臓に「毎日、ありがとう」と言わないように。
その代わり、妻に先立たれると、身体の一部を失ったショックで、弱ってしまう。
「第4章 脳とは、かくも厄介なものである」
謝るときも、気持ちに謝る。…「心細い思いをさせてごめん」と謝る。……女性が謝ってほしいのは、遅くなったという事実に対してじゃなく、待たされて連絡がとれなくて心細い時間を過ごした自分の気持ちに対してなのだから。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
前作『女の機嫌の直し方』、『妻のトリセツ』は、残念ながらかなり説得力があったのだが、やはりかなり女性側の一方的言い分だった。この本では、男の脳はその昔狩りをするため空間認知能力が高いがそのために……なので、やむを得ないのだと、女性に諦めることを勧めている。
女性はこう、男性はこうと、決めつける箇所が多いが、話を分かりやすく、面白くするために、新書レベルではしかたないだろう。夫婦の会話など引用例は秀悦で、確かにと笑える。
でき過ぎる息子、ひねたところなしの夫、姑になつくおよめちゃん、などそこらじゅうが家族自慢で鼻につく。
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)
1959年長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテーター、感性アナリスト、随筆家。
奈良女子大学理学部物理学科卒業。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて、人工知能(AI)の研究開発に従事。
2003年(株)感性リサーチを設立、同社代表取締役に就任。感性分析の第一人者。
著書『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』 、『恋愛脳』、『夫婦脳』、『家族脳』、『日本語はなぜ美しいのか』、『「ぐずぐず脳」をきっぱり治す! 』、『キレる女 懲りない男――男と女の脳科学』、『英雄の書』、『女の機嫌の直し方』、『妻のトリセツ』、『夫のトリセツ』など。