マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー著、柳沢由美子訳『刑事マルティン・ベック 消えた消防車』(角川文庫シ3-25、2018年4月25日)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
厳寒のストックホルム。警察が監視中のアパートが突如、爆発炎上した。任務についていたラーソン警部補は住人を救うべく孤軍奮闘するが、出動したはずの消防車が一向に到着しない。焼死者の中には、ある事件の容疑者が含まれていた。刑事マルティン・ベックは捜査を進めるうち、この火災に奇妙な点があると気づく。やがて捜査陣の前に浮かび上がってきたのは、意外な犯罪の構図だった―。警察小説の金字塔シリーズ、第五作。
マルティン・ベック:ストックホルム警察刑事殺人課警部。16歳の娘・イングリッド、14歳の息子・ロルフ。
レンナート・コルベリ:同警部補(途中で警部)。ベッグの相棒。妻はグン。6か月の娘・ボーディル。
フレドリック・メランダー:同警部補。ベテランで記憶力抜群。48歳。妻はサーガ。
グンヴァルド・ラーソン:同警部補。約43歳。身長192センチ。
エイナール・ルン:同警部補。温厚で赤鼻。
ベニー・スカッケ:同警部補。27歳。新人。オーケ・ステンストルムの後任。
エヴァルト・ハルマン:ストックホルム警察警視正。ベックの上司。定年を楽しみに。
サクリソン:防犯課巡査。23歳。
イェルム:国立犯罪技術研究所(SKL)の鑑識官。小言が多く、苛立ちやすいが、非常に優秀。
ペール・モンソン:マルメ警察刑事殺人課捜査官
オーサ・トレル:殉死したオーケ・ステンストルム警部補の恋人。警察学校へ入学。
ユーラン・マルム:警察が監視中の車泥棒?。42歳。焼死体で発見。
ケネット・ロート:火事で焼死。6回刑務所入りの泥棒。27歳。
マックス・カールソン:男性。ケネット・ロートの訪問者。
カルラ・ベリグレンとマデレーン・オルセン:女性16歳と女性24歳。ケネット・ロートの訪問者。
モーディング一家:母で娼婦のアンナ=カイサ30歳、ケント5歳、クラーリ7か月、クリスティーナ14歳は火事で焼死。
アグネス、ヘルマン・スーデルベリ:火事で焼死。アルコール依存症の68歳と、67歳の夫婦。
バッティル・オーロフソン:盗難車関連の犯罪者。36歳。
エーンスト・シーグルド・カールソン:シッゲ。自殺。保険会社勤務。46歳。独身。
小さいが多くの気になる謎が未解決のまま最終部まで引っ張られる。
・消防車はなぜすぐ来なかったのか?
・ルンの息子の家の中にあったおもちゃの消防車はどこに行ったのか?
・探しても探しても見つからない鍵となるオーロフソンはどこにいるのか?
・冒頭で自殺したエーンスト・シーグルド・カールソンはなぜマルティン・ベックの名を書いたのか?
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
やや関連する細かい謎が重なっていて、焼死したマルムの後ろに姿が見えない主犯がいる構造が複雑で、楽しめる。
本シリーズは初めての警察小説だと思うが、警察内部の人間関係がくっきりと描かれ、各刑事の家庭がチラリと姿を見せる構成が小説に厚みを出している。
登場人物が多すぎる。北欧の人名は日本人には覚えられない。原文への忠実な翻訳でなくなっても、呼びかけ時でも、文中でも、フルネームではなく、愛称か、名前だけにしてもらいたかった。